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» 2014年06月13日 07時00分 UPDATE

自然エネルギー:営農と太陽光発電の組み合わせ、「3つの壁」あり (1/2)

静岡県で農業と太陽光発電を共存させる「ソーラーシェアリング」発電所が立ち上がった。手動でモジュールを回転できる発電所として、全国でも初めて水田の上に設置した事例だという。ただし、計画から運転開始までの道のりは平たんではなく、大きく3つの壁があった。メガソーラーやミドルソーラーなどとは異なる壁だ。設計から施工までを担当した発電マンの岩堀良弘氏に聞いた。

[畑陽一郎,スマートジャパン]

 「ソーラーシェアリングの案件を引き受けるまでは、さまざまな問題が隠れていることに気付いていなかった」(発電マン代表取締役の岩堀良弘氏)。ソーラーシェアリングとは、作物を植える農地の真上に藤棚のような太陽光発電システムを設ける仕組み。1つの土地を農業と発電でシェアするという意味だ。

 垂直な柱を農地に複数設置し、その上に太陽電池モジュールを載せる架台を水平に渡す(図1)。メガソーラーとは異なり、太陽電池モジュール同士の間隔を広く取り、太陽光を地面に当てるための仕組みが必要だ。

yh20140614Izunokuni_persons_590px.jpg 図1 発電マンが手掛けたソーラーシェアリング発電所の外観 出典:発電マン

農地転用には温度差あり

 国内のソーラーシェアリングは営農と太陽光発電の両方に興味がある個人の取り組みとして始まった。当時はソーラーシェアリングに向く市販の部材はなく、自作に近い形だったという。

 加えて農地法の制約が大きかった。農地を営農以外に利用する場合は、一時転用手続きが必要だ。太陽光発電について、どのような場合に農地の一時転用を認めるのか、指針すらも定まっていなかった。そうした中、2013年3月に農林水産省が指針となる文書を公開(関連記事)、ソーラーシェアリングに取り組もうとする農家が急増した経緯がある。

 冒頭の発言にある問題は、3つの壁として発電所実現に立ちふさがった。農地転用を認める農業委員会、ソーラーシェアリングに適した部材、農家の資金調達だ。

 「農林水産省の文書が十分には浸透していない農業委員会がある。対応が実に厳しかった。ソーラーシェアリングを実際に試さない限り分からないような数値*1)を、着工前に証明するように求められることもあった。農家も施工を担当する企業もかなりの努力と意欲がないと太陽光発電所の実現に至らない場合があるだろう」(岩堀氏)。岩堀氏が静岡県の農業委員会と交渉した場合は、2013年8月から11月まで3カ月を要したという。

*1) 農林水産省の文書には「下部の農地における単収が、同じ年の地域の平均的な単収と比較しておおむね2割以上減少している場合」には、「営農の適切な継続が確保されていないと判断される」とある。こうなると一時転用は認められない。岩堀氏の場合は、静岡県立大学の教授へ個人的に依頼し、サトイモの光飽和点に関する論文などを入手、農業委員会に提出することで2割という数値を証明しようとした。光飽和点以上の強度の光を与えても植物の成長や収穫は増えないため、太陽電池モジュールが遮る光の量と比較できる。

適切な太陽電池モジュールがない

 農地の一時転用が認められた後、第2の壁が見えてきた。太陽電池モジュールだ。「ソーラーシェアリングでは太陽電池モジュールを高い位置に設置するため、軽くなくてはならない。モジュール自体の影やモジュールが受ける風の影響を少なくするため、小さいものが必要だ。住宅用の太陽電池モジュールは出力を高めており、200W程度の大型品を多用している。今回必要だったのは出力が100W程度のものだ。ところが、大手メーカーはいまだソーラーシェアリングに適した寸法、出力のモジュールを用意していない。そこで、カスタマイズを受け付けるメーカーに依頼した。農業委員会の許可が出た後、着工が2014年4月まで遅れたのは、太陽電池モジュールの調達に時間を要したためだ」(同氏)。

 岩堀氏によれば、農業委員会と太陽電池モジュールの壁を今回解決できたため、次の企画からは計画から完成までの時間を短縮できるという*2)。「既に県内の農家はもちろん、九州や東北からも声がかかっている」(同氏)。

*2) 第3の壁である資金調達は、農家側の努力に依存する。今回の施主の場合は、新たにSmart Lifeという法人を立ち上げて融資に備えた他、自主的に複数の金融機関と交渉を重ねたことで調達できたのだという。

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