銀行の支店をネット・ゼロ・エネルギーに、卒原発で注目を集める滋賀県でスマートショップ

実質的なエネルギー消費量をゼロにする「ネット・ゼロ・エネルギー」の取り組みが銀行の店舗でも始まった。滋賀銀行は2015年6月にオープンする新しい店舗に各種の省エネ設備と太陽光発電を導入して、ネット・ゼロ・エネルギー(CO2排出量ゼロ)を実現する計画だ。

» 2014年07月18日 09時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 滋賀銀行が新店舗を建設するのは、滋賀県南部の栗東市(りっとうし)で営業中の「栗東支店」である。新店舗の屋上と駐車場の屋根に合計で約360枚の太陽光パネルを設置して、年間に9万1000kWh(一般家庭で25世帯分)の電力を供給する計画だ。太陽光発電によって支店で使う電力を自給自足できるようになる(図1)。

図1 「栗東支店」の新店舗の完成イメージ。出典:滋賀銀行

 新店舗では省エネ対策として、室内と屋外の両方にLED照明を採用するほか、机上の照明と組み合わせたタスク・アンビエント方式で電力の使用量を削減する。さらに太陽光を室内に取り込む「スカイチューブ」や、室内と室外の空気を熱交換する「全熱交換器」を導入して、照明と空調による電力使用量を大幅に抑制する狙いだ。

 滋賀銀行が従来型の店舗と比較した試算では、CO2排出量に換算して照明が約5割減に、空調が約4割減になる。全体では34%の削減になる一方、それを上回る電力を太陽光発電で供給できる見込みである(図2)。これによりCO2排出量が実質的にゼロになる「カーボンニュートラル」を実現して、同様にエネルギー消費量も実質ゼロになる。

図2 CO2排出量の削減効果。出典:滋賀銀行

 新店舗は2015年3月中旬に仮オープンして営業を開始した後、6月中旬に店舗まわりの工事を終えて正式に開店する予定だ。滋賀銀行は環境省が認定する各業界の環境トップランナーである「エコ・ファースト企業」に銀行界で唯一選ばれている。省エネや温暖化対策に取り組む企業に低利で融資する制度を実施するなどの事業活動が評価された。カーボンニュートラルの店舗を建設するのは栗東支店が初めてのケースになる。

 滋賀県は原子力発電所が集中する福井県の若狭湾岸から近いこともあり、電力・エネルギーに対する地域住民の関心は高い。先ごろ7月13日の県知事選挙でも「卒原発」を掲げる候補が当選して注目を集めたばかりだ。銀行が店舗をネット・ゼロ・エネルギーに変えていくことを評価する土壌がある。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.