小売全面自由化の6カ月前に、新電力を支援するクラウド開始電力供給サービス

2016年4月に始まる電力の小売全面自由化に向けて、新規参入の動きが活発だ。新電力の各社は業務開始までに家庭向けの料金計算や顧客管理などを処理するための情報システムが必要になる。送配電事業者のシステムとの連携や、インターネットを活用した顧客サービスも欠かせない。

» 2014年08月29日 11時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 小売全面自由化の開始まで、残り1年半あまりになった。電力会社に対抗して家庭の顧客を数多く獲得するために、新電力の各社は販売する電力の確保と同時に情報システムの整備に追われている。システム構築を支援するアクセンチュアによると、自由化の6カ月前、2015年9月までに開発を完了しておくことが望ましい(図1)。その後には10月から送配電事業者との連携テストなどが必要になるためだ。

図1 小売全面自由化までのスケジュール(画像をクリックすると拡大)。出典:アクセンチュア

 アクセンチュアは新電力を対象に、電力の小売に必要な情報システムの機能をそろえた「AEPS(Accenture Energy Platform Services)」を2015年10月から拡充する。AEPSは顧客情報管理や料金計算などの基本業務を中核に、送配電事業者との連携機能、インターネットを活用した顧客サービスの機能を含んでいる(図2)。

図2 「AEPS」の機能構成。出典:アクセンチュア

 新電力みずからで情報システムを運用しなくて済むように、データセンターからクラウドサービスで提供する仕組みだ。中核のコア機能のうち、顧客情報管理や料金計算の部分は2014年3月にクラウドサービスを開始している。

 さらに全国の需給調整を担う電力広域的運営推進機関の「スイッチング支援システム」や、送配電事業者(電力会社の送配電部門)のシステムとの連携機能を2015年10月からリリースして、小売全面自由化に対応できるようにする(図3)。

図3 主な機能のリリース予定。出典:アクセンチュア

 ただしコア機能に含まれるスマートメーターからのデータ収集機能、および送配電事業者との連携機能については、地域ごとに電力会社のシステムが異なるために、リリース時期は地域によって差がある。市場規模が最も大きい東京電力との連携機能から提供して、その後に各電力会社に順次対応する見通しだ。

 スマートメーターから得られる30分単位の電力消費データを顧客情報と組み合わせて、使用量の見える化や使い過ぎの警告通知なども可能にする(図4)。すでに自由化が進んでいる欧米では、顧客別の割引プランやポイントプログラムとの連携が欠かせないサービスになっている。日本でも電力会社と新電力のあいだでサービス競争が始まるのは必至で、IT(情報技術)の活用が競争力を左右することになる。

図4 スマートメーターのデータを活用した顧客サービス。出典:アクセンチュア

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