芋焼酎の粕から1100世帯分の電力、酒造メーカーが挑む「サツマイモ発電」スマートファクトリ

創業97年の歴史を誇る老舗の焼酎メーカーが宮崎県の工場でバイオマス発電を開始した。芋焼酎の製造工程で発生する粕を発酵させてバイオガスを生成して、発電用の燃料に利用する。焼酎の生産量の伸びに伴って増加する大量の粕を有効にリサイクルする手段になる。

» 2014年09月03日 09時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 芋焼酎の「霧島」で知られる霧島酒造は1917年(大正5年)に宮崎県の都城市で焼酎の製造を開始した老舗メーカーだ。製造工程で発生する大量の焼酎粕をリサイクルするために、2006年からメタン発酵によるバイオガスの生成に取り組んできた(図1)。従来は工場のボイラーの燃料などに利用してきたが、バイオガスの生成量が増加したことに対応して発電にも利用する。

図1 バイオガスを生成するプラント(左)、焼酎の原料になるサツマイモの畑(右)。出典:霧島酒造

 都城市にある本社工場の敷地内で9月中に発電を開始する。年間の発電量は400万kWhを見込んでいて、一般家庭で約1100世帯分の電力使用量に相当する規模になる。発電した電力は固定価格買取制度を利用して全量を九州電力に売電する方針だ。メタン発酵によるバイオマス発電の買取価格は1kWhあたり39円(税抜き)に設定されているため、年間の売電収入は1億5600万円になる。

 芋焼酎を製造すると、蒸留後に残る粕の量は焼酎の2倍にもなる。この大量に出る焼酎粕をメタン発酵設備に取り込んで、微生物を使って発酵させてバイオガスを生成する(図2)。1日あたり最大で800トンの焼酎粕を処理することができて、約3万6000立方メートルのバイオガスを生成する能力がある。

図2 芋焼酎の粕をリサイクルする仕組み。出典:霧島酒造

 生成したバイオガスは焼酎を製造する工程でボイラーの燃料に利用するほか、焼酎粕の固形分を乾燥させて飼料として販売している。新たにバイオガスを発電にも利用することで、このところ増加傾向を続けている生産量に対応したリサイクルの仕組みを実現する。

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