「うどん県」が挑むバイオマス発電、ようやく広がる太陽光エネルギー列島2013年版(37)香川

讃岐うどんの本場・香川県ならではの再生可能エネルギーがある。うどんの生産工程で発生する廃棄部分からメタンガスとエタノールを生成して、電気や温水を作り出す。うどんを茹でる燃料にも再利用できる「うどんまるごと循環プロジェクト」で独自のエネルギーサイクルを拡大中だ。

» 2013年12月10日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 香川県の高松市で「うどんまるごと循環プロジェクト」が始まったのは2012年1月のことだ。県内にはうどん店のほかに製麺所が数多くあり、生産から時間が経過したものを含めて、廃棄処分になる量は想像以上に多い。この「生うどん」という貴重なバイオマスからエネルギーを作り出し、循環型の社会モデルを構築することがプロジェクトの目的である(図1)。

図1 「うどんまるごと循環プロジェクト」の全体像。出典:うどんまるごと循環プロジェクト

 プロジェクトの中核を担うのは、地元の産業機械メーカー「ちよだ製作所」である。2008年から社内にバイオガス実証プラントを設置して、食品廃棄物などからメタンガスやエタノールを生成する試みを続けてきた(図2)。

 そしてプロジェクト発足から3カ月後の2012年4月には、うどんの廃棄部分を製麺所などから収集してエタノールの生産を開始した。うどんに酵素や酵母、水を加えて発酵させると、2日程度でエタノールができる。このエタノールを燃料にして、うどん店でうどんをゆでるのに利用する。

図2 ちよだ製作所のバイオガス/エタノール実証プラント。出典:ちよだ製作所

 さらにエタノールの発酵後に残るカスを再び発酵させると、メタンガスを作ることができる。メタンガスを使ったバイオマス発電設備は2013年8月に稼働した。年間の発電量は18万kWhを見込み、固定価格買取制度(バイオガスの場合は1kWhあたり39円)を適用すると700万円程度の売電収入になる。

 生うどんからの最終成分は、メタンガスを生成した後のカスである。これも農業用の肥料にして、小麦や野菜などの栽培に生かす。その小麦から、うどんを作れば、まさに循環型のモデルが完成するわけだ(図3)。

 プロジェクトのスローガンには「うどんからうどんを作る」と「うどんでうどんを茹でる」の2つがある。うどんを余すところなく最大限に活用しながら再生可能エネルギーを拡大する取り組みである。

図3 「うどんまるごと循環プロジェクト」の事業モデル。出典:うどんまるごと循環プロジェクト

 香川県は面積が全国で最も小さく、再生可能エネルギーの導入量も最下位の47位にとどまっている(図4)。これまでは瀬戸内海の豊富な日射量を生かし切れていなかったが、ようやく最近になってメガソーラーの建設計画が広がってきた。

図4 香川県の再生可能エネルギー供給量。出典:千葉大学倉阪研究室、環境エネルギー政策研究所

 実は今から30年以上前の1981年に、瀬戸内海に面した三豊市の仁尾町(におちょう)で「仁尾太陽博」が開かれたことがある。世界初の太陽熱を利用した1MWのメガソーラーを建設したが、残念ながら実用化には至らなかった。

 このメガソーラーの跡地で、2013年11月に「サンシャインパーク仁尾」が2.5MWの規模で運転を開始した(図5)。太陽熱と太陽光の違いはあるものの、32年の月日を経て、発電規模が2.5倍になって生まれ変わった格好だ。

 事業を運営するのは四国電力グループの四電工と地元の建設会社である。約3万平方メートルの土地に1万枚の太陽光パネルを設置した。年間の発電量は250万kWhになり、一般家庭で700世帯分に相当する。32年前のメガソーラーと違って、最低でも20年間は稼働し続ける。

図5 「サンシャインパーク仁尾」の全景と所在地。出典:四電工

 同じ三豊市内では2013年10月にも、2.3MWのメガソーラーが運転を開始している。日当たりの良い養鶏場の跡地にオリックスが建設した(図6)。年間の発電量は仁尾町のメガソーラーと同様の250万kWhを見込んでいる。

図6 「オリックス三豊メガソーラー発電所」の建設前と完成後。出典:三豊市総務部、オリックス

 このほかに高松市のえび養殖場の跡地でも、京セラグループが2MWのメガソーラーを建設する計画だ。瀬戸内海の沿岸部には太陽光発電に適した用地が数多く残っている。日射量を生かしたメガソーラーの開発プロジェクトは、まだまだ増えていく。

*電子ブックレット「エネルギー列島2013年版 −四国編−」をダウンロード

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