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» 2014年09月29日 13時00分 UPDATE

動き出す電力システム改革(19):発電と小売をつなぐ「一般送配電事業者」、需給調整能力に課題が残る

小売全面自由化に伴って、電力会社の送配電部門は「一般送配電事業者」へ移行する。自由化で増加する小売事業者と発電事業者を束ねて、地域内の需要と供給のバランスを調整することが最大の役割だ。発電量が変動する再生可能エネルギーを加えた高度な需給調整能力が求められる。

[石田雅也,スマートジャパン]

第18回:「広域機関の需給調整システム、小売全面自由化に向けて10月から開発」

 九州電力が電力需給バランスの問題を理由に、再生可能エネルギーによる発電設備の接続申し込みを数カ月にわたって保留することを決定した。同様の対応策は他の電力会社にも拡大する可能性があり、再生可能エネルギーの普及に暗雲が漂い始めている。

 電力会社は地域ごとの送配電ネットワークを運用して、発電事業者が供給する電力を需要家に送り届ける役割を担っている(図1)。2016年4月に始まる小売全面自由化に合わせて、電力会社の送配電部門は「一般送配電事業者」へ移行することになっている。同じ電力会社の発電部門や小売部門から独立の立場になって送配電ネットワークの運営にあたる必要があるためだ。

souhaiden1_sj.jpg 図1 電力小売全面自由化後に「一般送配電事業者」が実施する需給調整の全体像。出典:資源エネルギー庁

 一般送配電事業者の最大の役割は、地域内の電力需要と供給力のバランスを維持することにある。電力は常に需要と供給を一致させる「同時同量」が原則だ。どちらかが過剰な状態になってしまうと、供給する電力の周波数が不安定になり、最悪の場合は大規模な停電を引き起こす恐れがある。

 そうした事態を回避するために、電力会社は3段階の「予備力」を用意して供給力を調整している(図2)。最も短い数秒で反応できる「瞬動予備力」には、電力の周波数の変動に合わせて自動的に出力を変えられるガバナフリー発電機などを利用する。さらに数分単位や数時間単位で運転を開始できる火力発電や水力発電を組み合わせて、常に同時同量を維持して電力を安定供給する仕組みだ。

souhaiden2_sj.jpg 図2 周波数を調整するための「予備力」の種類。出典:資源エネルギー庁

 ところが新たな問題が2つ浮上してきた。1つは再生可能エネルギーによる発電設備の増加で、九州電力が送配電ネットワークへの接続申し込みを保留した理由である。特に太陽光発電と風力発電は天候によって出力が変動するために、発電設備が増加して変動量が大きくなると、電力会社の予備力で対応できなくなる可能性がある。

 もう1つの問題は小売全面自由化によって小売事業者と発電事業者が増えることによる。各事業者は30分単位で同時同量を維持することが義務づけられ、販売する電力量と送配電ネットワークに供給する電力量を一致させる必要がある。ただし30分間のうちの需要と供給の変動は一般送配電事業者が調整しなくてはならない。小売事業者と発電事業者が多くなるほど、調整を必要とする範囲が広がるわけだ。

 こうした新たな問題の解決策は2015年4月に業務を開始する「電力広域的運営推進機関」を中心に策定して実行する。現在は電力会社が前日の時点で時間単位の発電計画を策定して、当日の変動分は予備力で調整する方法をとっている。小売全面自由化後は当日の1時間前まで需給計画を変更できるようにする予定だ(図3)。直前に調達する電力は卸電力取引所などを活用する。

souhaiden4_sj.jpg 図3 電力小売全面自由化後の「一般送配電事業者」による需給調整の流れ。出典:資源エネルギー庁

第20回:「一般送配電事業者のインバランス料金、競争を促す新体系に」

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