再エネ事業に必要な人材とスキル、太陽光からバイオマスまで体系化法制度・規制

太陽光など5種類の再生可能エネルギーを対象に、発電事業に求められる人材とスキルを国が初めて体系化した。発電事業の予備調査から発電所の設計・工事・運営・撤去までの各プロセスで実行内容を定義して、それぞれに学習項目を設定した。発電事業者などの人材育成に生かす狙いだ。

» 2014年12月09日 11時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 経済産業省が12月5日に「再生可能エネルギースキル標準(GPSS:Green Power Skills Standard)」を初めて公表した。再生可能エネルギーによる発電事業を成功させるためには、予備調査から始めて適切な手順を実行する必要がある。そこで求められる人材とスキルを体系化したものがGPSSである。

 GPSSでは発電事業を6つのプロセスに分けて、8つの職種ごとに必要なスキルを定義した(図1)。「予備調査」に続く「詳細検討」を経て、発電所の「設計」「工事」「運営」「撤去」までを含んでいる。職種は事業全体を統括する「エネルギーアーキテクト」のほか、専門領域別に「エネルギー技術スペシャリスト」などを設定した。

図1 「再生可能エネルギースキル標準(GPSS)」の対象になる職種と事業プロセス。出典:経済産業省

 GPSSの内容は大きく2つに分かれている。発電事業に携わる人材のキャリア開発とスキル教育に関する「キャリア・スキル体系編」に加えて、それぞれのスキルを習得するために必要な学習項目をまとめた「知識体系編」がある(図2)。この2つの体系に従って事業者や教育機関が人材を育成できるようにした。

図2 GPSSの全体構成。出典:経済産業省

 例えば発電事業全体の設計を担う「エネルギーアーキテクト」の場合には、事業プロセスの前半にあたる予備調査と詳細検討を適切に実行できるように、有望な地域の抽出方法や経済性の評価などが必要なスキル項目として挙げられている(図3)。そのほかにも資金調達手法などファイナンスに関するスキルや、分散型システムの系統連系といったテクノロジに関するスキルも加わる。

図3 スキル項目(エネルギーアーキテクトの場合)。出典:経済産業省

 こうしたスキルを習得するための学習項目を列挙したものが知識体系編で、5種類の再生可能エネルギー別に学習項目が分けられている。太陽光発電の場合には、日照時間と日射量の調査方法をはじめ、事業プロセスの後半になると太陽光パネルの据付・点検方法などが学習項目に入る(図4)。同様に風力であれば風況データの調査方法、バイオマスであれば利用可能量の把握方法が盛り込まれている。

図4 スキル項目に対応した学習項目(太陽光発電の予備調査の例)。出典:経済産業省

 経済産業省は2013年7月から「Green Power プロジェクト」を通じて、再生可能エネルギーの分野で人材の育成に取り組んできた。GPSSはその一環で策定したもので、発電事業者や教育機関に普及させて新しいエネルギー産業の発展に生かす狙いである。今後はGPSSに準拠したテストや資格制度が始まることも想定できる。

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