地中熱を利用した冷暖房や給湯が増える、震災後の設置件数が2倍に自然エネルギー

再生可能エネルギーの導入機運を背景に、地中熱を利用したシステムが住宅や公共施設を中心に広がってきた。年間を通じて温度が一定の地中熱をヒートポンプで取り込み、冷暖房や給湯に利用する。環境省の調査によれば、震災前と比べて年間の設置件数が約2倍に増えている。

» 2015年01月30日 11時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]
図1 地下駅に設置した地中熱利用システムの熱交換器。出典:小田急電鉄

 太陽光や風力などは地域や場所によって資源量が大きく変わるのに対して、地中熱は全国どこでも安定した状態で手に入れることができる。季節に関係なく温度が一定のため、夏の冷房や冬の暖房に利用することが可能だ。最近では駅の冷暖房に地中熱を取り入れる例も出てきた(図1)。

 地中熱を利用した冷暖房や給湯のシステムは年々増えている。環境省が建築事業者や自治体などを対象に実施した「地中熱利用ヒートポンプシステムの設置状況調査」によると、2013年は過去最高の272件のシステムが新たに設置された。特に東日本大震災が発生した2011年から設置件数が急速に伸びている(図2)。

図2 地中熱利用ヒートポンプシステムの設置件数(年間:棒グラフ、累計:折れ線グラフ)。出典:環境省

 地中熱の利用形態にはさまざまな方法があるが、その中で最も多いのがヒートポンプによる冷暖房や給湯だ。通常の冷蔵庫やエアコンにも使われている方法で、熱を伝達する媒体を循環させて高温や低温を作り出すことができる。地中熱の場合には水や不凍液を利用する「クローズドループ」方式と、地下水を利用する「オープンループ」方式がある(図3)。現状では設置場所を選ばないクローズドループが8割以上を占める。

図3 地中の温度(左)、地中熱利用ヒートポンプシステムの構造(右)。出典:環境省

 地中熱を利用したヒートポンプシステムは寒冷地を中心に住宅に導入するケースが多い(図4)。そのほかでは公共施設や学校、店舗や宿泊施設など、冷暖房に加えて給湯の需要が大きい場所に数多く導入されている。

図4 地中熱利用ヒートポンプシステムの設置場所(2013年末)。出典:環境省

 都道府県別に見ると北海道が圧倒的に多く、2013年末の時点で426件の導入事例がある(図5)。全国の3割近くが北海道に集中している。次いで東京都の107件、岩手県の100件、秋田県の93件と続く。一方で西日本は少なく、沖縄県では導入事例が1件もない。今後は補助金の活用を含めて設置コストの低下が期待できるため、温暖な西日本にも地中熱を利用したシステムが広がっていく可能性は大きい。

図5 都道府県別の設置件数と分布状況(2013年末)。出典:環境省

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