福島沖に設置する超大型の風力発電機、スコットランドで実証試験蓄電・発電機器

三菱重工業は1基で7MWの発電能力がある世界最大級の風力発電機をスコットランドの実証試験場に設置した。福島沖で進んでいる浮体式の洋上風力発電プロジェクトに採用する超大型機で、風車の直径は167メートルもある。新開発の油圧ドライブで風車の回転数を増速できる点が特徴だ。

» 2015年02月09日 09時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 超大型機を設置したスコットランドの実証試験場は、洋上風力用の発電設備を専門にテストする英国政府公認のセンターである。三菱重工業が横浜製作所で製造した部品を現地に搬送して組み立てた(図1)。福島沖の洋上に設置する7MW(メガワット)の超大型機と同じもので、スコットランドの実証結果をもとに4月以降に福島沖で建設する計画だ。

図1 英国スコットランドの実証試験場に設置した7MWの風力発電設備。出典:NEDO

 風車の羽根(ブレード)の長さは81メートルあり、回転直径は167メートルになる。中心部分のハブの高さは110メートル程度で、風車の最高到達点は200メートル近くに達する。福島沖で2013年に運転を開始した2MWの大型機は回転直径が80メートルであることから、2倍以上の大きさになる。

 7MWの風力発電設備を実用化するにあたって、三菱重工業はNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)のプロジェクトで開発した油圧ドライブ方式を取り入れた。風車の回転エネルギーをポンプで油圧に変換して、油圧の力で発電機を回転させる方法だ(図2)。この仕組みを使って風車の回転数を増速することができる。1分間に約10回の風車の回転を毎分1000回転に増やして発電機のモーターを駆動する。

図2 風車と発電機をつなぐ油圧ドライブの仕組み。出典:NEDO

 通常の風力発電設備にはギアを利用した増速機が組み込まれているが、油圧ドライブ方式では必要がなくなる。さらに回転数に応じて交流の電力を生み出せる同期発電機を利用できるため周波数変換装置も不要だ。こうした利点を生かして風力発電設備の大型化に対応できた。

 福島沖に設置する7MWの超大型機も三菱重工業が製造を担当する。すでに浮体部分は長崎県の造船所から福島県の小名浜港まで曳航を完了した(図3)。小名浜港で浮体部分の上に風車の搭載作業を進めて、完成後に沖合18キロメートルの場所にある洋上風力発電所に曳航して設置する予定だ。運転を開始するのは当初の計画から少し遅れて4月以降になる。

図3 福島沖に設置する風力発電設備の浮体部分(長崎港から小名浜港へ曳航)。出典:福島洋上風力コンソーシアム

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