高原に風車11基と大型蓄電池、電力自給率35%を目指す岩手県自然エネルギー

震災からの復興を進める岩手県では2020年までに電力の自給率を35%に引き上げる計画を推進中だ。県営で2カ所目の風力発電所を2017年に運転開始する予定で、建設の前に必要な環境影響評価の手続きを開始した。北部の高原地帯に11基の風車を設置して1万5000世帯分の電力を供給する。

» 2015年02月12日 09時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 岩手県営の風力発電所を新設する場所は、北部の一戸町(いちのへまち)に広がる高森高原である(図1)。標高670メートルの高原のうち約360万平方メートルの区域を対象に、11基の大型風車と1台の蓄電池を設置する。風車1基の発電能力は2.3MW(メガワット)で、合計すると25.3MWに達する。

図1 風力発電所を建設する高森高原。出典:岩手県企業局

 年間の発電量は5300万kWhを見込んでいて、一般家庭で1万5000世帯分の使用量に相当する。地元の一戸町の総世帯数(約5800世帯)に対して2.5倍の規模になる。総事業費は115億円を想定していて、固定価格買取制度による売電期間20年の累計で約20億円の利益を出せる見通しだ。

 高森高原の一帯は風況に恵まれていて、地上60メートルでは年間の平均風速が6.5メートル/秒に達する。風力発電の設備利用率(発電能力に対する実際の発電量)は6.5メートル/秒の場合に28%程度を見込むことができる。現在の計画では24%と低めに想定しているため、実際の発電量は予想値を上回る可能性が大きい。

 ただし東北地方では太陽光や風力の導入量が拡大して、新たに建設する発電設備には出力制御を求められる。高森高原の風力発電所には大型の蓄電池を併設して、天候による出力の変動に対応するのと同時に余剰電力を充電できるようにする。蓄電容量が1万7280kWhの鉛蓄電池を導入する予定で、想定発電量に対して約0.1日分を充電することができる。

 高森高原には町営の放牧場や天文台があって、観光客が数多く訪れる(図2)。岩手県は風力発電所の建設によって地域の振興を図りながら、県内の児童の環境教育にも役立てる方針だ。環境影響評価の手続きを2015年度内に完了して、2016年4月から工事に入る計画である。運転開始は2017年11月を予定している。

図2 「高森高原風力発電所」(仮称)の風車配置計画と周辺施設。出典:岩手県企業局

 岩手県では再生可能エネルギーによる電力の自給率を2020年度に35%まで高める目標を掲げている。2010年度の18.1%から10年間で倍増させる意欲的な構想だ。ただし2013年度の時点では18.6%にとどまっていることから、県が率先して導入量を拡大していく。

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