市立病院を「スマートホスピタル」に、エネルギーコストを削減スマートシティ

電力や熱を効率的に利用できる設備の導入プロジェクトが病院にも広がり始めた。川崎市では基幹の市立病院のエネルギー関連設備を高効率なものに更新して、コスト削減と同時に防災対策を強化する方針だ。コストメリットが確実に見込めるESCO方式を採用して設備の更新を進めていく。

» 2015年02月18日 11時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]
図1 「川崎市立川崎病院」の外観。出典:川崎市病院局

 川崎市がエネルギー関連設備の更新を計画している施設は「川崎市立川崎病院」である。東京湾に近い沿岸部に1998年に建設した地上15階建ての基幹病院で、市内に6カ所ある災害医療拠点病院の役割も果たしている(図1)。

 こうした基幹病院では電力・ガス・水を大量に使うことから、特に東日本大震災後のエネルギーコストの増加が大きな課題になっている。川崎病院の場合には2009〜2013年度の5年間で電気代は1.4倍に、ガス代は1.7倍に拡大した(図2)。災害時の停電対策としてガスコージェネレーションによる電力と熱の供給体制を常に維持していることもコストを増加させる要因の1つである。

図2 川崎病院の水道代・ガス代・電気代。出典:川崎市病院局

 その一方で2000年度から省エネに取り組み、年間の電力使用量を約15%削減してきた(図3)。照明を間引いたり空調の稼働効率を改善したりする対策を実施した効果だが、もはや運用による省エネは限界に達している。エネルギーコストを削減するためには、電力使用量の大半を占める熱源・空調・照明などの設備を更新する必要に迫られている。

図3 川崎病院の電力使用量。出典:川崎市病院局

 そこで川崎市はESCO(Energy Service Company)方式を採用して設備の更新を進めるプロジェクトに着手した。ESCO方式は専門の事業者が資金調達から設備の設計・施工、維持管理までを請け負って、省エネによるコスト削減分をメリットとして還元する仕組みである(図4)。導入する側は初期投資が不要で、年間のエネルギーコストを確実に削減することができる。

図4 川崎市が活用するESCO事業のメリット。出典:川崎市病院局

 川崎市では2015年度にESCO事業者による省エネ診断を受けたうえで、エネルギー関連設備の更新計画を策定する。その計画に基づいて2016年度から高効率の空調や照明の導入を開始して、その後にコージェネレーションをはじめとするエネルギー供給設備の更新を進める予定だ。合わせて設備監視システムやエネルギー監視システムも導入して防災機能を強化していく。

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