水と太陽光だけで300人分の電力と温水、CO2フリーの水素エネルギー実用化へ蓄電・発電機器

水素エネルギーの導入に取り組む神奈川県の川崎市が東芝と共同で、CO2フリーの自立型エネルギー供給システムの実証試験に乗り出す。太陽光で発電した電力を使って水から水素を作り、その水素で燃料電池から電力と温水を供給する仕組みだ。2015年4月から川崎市の臨海部で開始する。

» 2014年11月14日 13時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 川崎市と東芝は東京湾に面した臨海部に水素システムを設置して、2015年4月から2020年度までの6年間にわたって実証試験に取り組む計画だ。水素システムを設置する場所は公共施設の「川崎マリエン(川崎市港湾振興会館)」と、隣接する「東扇島中公園」である(図1)。

図1 水素システムの設置イメージ。出典:東芝

 水素システムは5つの装置を組み合わせる(図2)。水を電気分解して酸素と水素を発生させる「水電解水素製造装置ユニット」のほかに、「水素貯蔵タンク」「燃料電池ユニット」「蓄電池ユニット」「給水タンク」を含む。さらに太陽光パネルを組み合わせて、発電した電力を水の電気分解に使う一方、余剰分を蓄電池に貯蔵する。

図2 再生可能エネルギーと水素を組み合わせた自立型エネルギー供給システムの構成(画像をクリックすると拡大)。出典:東芝

 水と太陽光だけから電力と温水を供給できるため、災害時には自立型のエネルギー供給システムとして稼働する。発電能力は燃料電池と蓄電池を合わせて30kWになり、貯蔵できる電力量は天候によって350〜420kWhが可能だ。温水の供給量は1時間あたり60リットルを確保することができる。しかも都市ガスから水素を作る通常の燃料電池と違って、CO2フリーのエネルギー供給システムになる。

 水素システムを設置する川崎マリエンは帰宅困難者の一時滞在施設に指定されている。災害時には300人分の電力と温水を約1週間にわたって供給できる見込みだ。平常時は太陽光発電と蓄電池と合わせて、施設で利用する電力のピークカットやピークシフトなどの節電対策に生かす。水素システムはトレーラで運搬できる構造で作られているため、被災地へ送ることも可能である。

 川崎市と東芝は実証試験を通じて、平常時に施設に供給する水素エネルギーの利用効率のほか、災害時を想定したBCP(事業継続計画)に基づく水素システムの有効性を検証する予定だ。川崎市は水素エネルギーを活用した「未来型環境・産業都市」を目指して、臨海部に水素ネットワークを展開する構想も進めていく(図3)。

図3 「川崎臨海部水素ネットワーク」の展開イメージ(画像をクリックすると拡大)。出典:川崎市

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