再生エネで作り「水素EMS」で管理、水素ディーゼル自動車も自然エネルギー(1/2 ページ)

東芝は2015年3月、他の7社と共同で海外初の水素実証試験に参加すると発表した。スコットランドで風力と太陽光だけを用いて水素を製造し、蓄えた水素を燃料電池車に供給する。燃料電池に送って電力も得る。水素EMSを4年間運用することで貴重な運用データも得る。

» 2015年03月20日 07時00分 公開
[畑陽一郎スマートジャパン]
図1 グレードブリテン島の北部を占めるスコットランドとファイフ州メチル(赤)、首都エディンバラ(青)。ロンドン(紫)は南東部にある。

 東芝は2015年3月8日、他の7つの団体と共同で海外初の水素実証試験に参加すると発表した。風力と太陽光だけで水素を製造し、蓄えた水素を燃料電池車に供給する他、燃料電池に送って電力を得るというもの。

 実証試験の舞台となるのはスコットランドのファイフ州メチル(Methil、メトヒルとも)。北海に面した立地だ(図1)。18世紀から1970年代まで、長年、石炭積み出し港として栄えた歴史がある。

 スコットランドは電力源に占める再生可能エネルギーの比率を高める政策を打ち出している。2009年当時、再生可能エネルギーの比率は既に4分の1を超える27.4%。2012年にはいったん12%まで下がったものの、洋上風力などにより、2015年には50%、2020年には100%に高める。電力源として北海油田には頼らない形だ。

 「スコットランドが再生可能エネルギーに舵を切る中、メチルは石炭、すなわち二酸化炭素排出のイメージが強かったため、再生可能エネルギー関連の企業を州政府が集めた。今回の実証試験を通じて、エネルギーの地産地消と二酸化炭素レスの仕組みを作ることを目指している」(東芝)。

風力で水素を作って利用する

 メチル港には、水素関連設備を運用する非営利企業であるBright Green Hydrogenが設置済みの出力750kWの風車と、電力を利用して水から水素を生成する出力30kWの水電解装置がある。

 図2にはメチル港のドック3(図中央)に面したBright Green Hydrogenの風車(図左)と、同社の社屋(図右下)が写っている。

図2 メチル港と風車(クリックで拡大) 出典:スコットランド開発公社

 ファイフ州は2011年1月にFife Renewables Innovation Centreが完成したことを発表している。470万ポンドを投じた施設だ。このとき既に、風車と系統電力をエネルギー源として、水電解装置を動かしている(図3)。同センターは図2のすぐ手前の方向に広がっている。

 系統電力と風車に由来する電力、水素燃料電池の電力を切り替えてセンターに送ることができる。燃料電池以外の電力は地中熱ヒートポンプを駆動することにも使う。センターに暖房用の温水を供給するためだ。

図3 Fife Renewables Innovation Centreの設備と動作 出典:スコットランド開発公社
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