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» 2015年04月01日 11時00分 UPDATE

自然エネルギー:水からプラスチックを作る、「人工光合成」で化石燃料不要の化学品製造実現へ (1/2)

NEDOと人工光合成化学プロセス技術研究組合は、太陽エネルギーを利用した光触媒による水からの水素製造で、世界最高レベルの太陽エネルギー変換効率である2%を達成した。今後2021年度末(2022年3月期)にエネルギー変換効率10%を目指すとともに、同時に開発している分離膜技術と合成触媒技術を組み合わせ、化石資源が不要な化学品製造基盤技術の確立を目指す。

[三島一孝,スマートジャパン]

 NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)と人工光合成化学プロセス技術研究組合(ARPChem)は2015年3月31日、NEDOプロジェクトである「二酸化炭素原料化基幹化学品製造プロセス技術開発」(人工光合成プロジェクト)の概要と、現在までの成果として世界最高レベルとなる太陽エネルギー変換効率である2%を達成したことを発表した。

 人工光合成とは、太陽エネルギーを利用して水から水素と酸素を作り、さらに水素と二酸化炭素から有機化合物を作る技術のこと。同プロジェクトは、化石資源に依存する化学産業の低炭素化実現を目標に実施されており、人工光合成の一種である、太陽エネルギーを利用した光触媒による水分解を利用することで、水素と酸素を分離。さらに、その水素と二酸化炭素を原料とし、プラスチックなどの原料となる基幹化学品(C2〜C4オレフィン)※)を作り出すことを目的としている。

※)C2〜C4オレフィン:二重結合を1つ含む炭化水素化合物で、炭素数2から4のもの。C2はエチレン、C3はプロピレンと呼ばれ、プラスチック原料などとなる基幹化学品として用いられている

 これらを実現するには、以下の3つの技術開発が必要となり、同プロジェクトでは、これらの技術開発を2012年度(2013年3月期)から、5〜10年の中長期計画で進めている。

  1. 光触媒開発:太陽エネルギーを利用した水分解で水素と酸素を製造する光触媒材料およびモジュールの開発
  2. 分離膜開発:同時に発生する水素と酸素を分ける分離膜およびモジュールの開発
  3. 合成触媒開発:水から製造する水素と発電所や工場などから排出する二酸化炭素を原料として、C2〜C4などの基幹化学品を合成する触媒およびプロセス技術の開発
photo 「二酸化炭素原料化基幹化学品製造プロセス技術開発」の概要 ※出典:NEDO

日本が技術で勝つための「人工光合成」

photo 東京大学 大学院 工学系研究科化学システム工学専攻 教授 堂免一成氏

 「光触媒開発」と「分離膜」については材料からの検討を行うため10年の研究期間としている。一方、「合成触媒」の研究については一定レベルの既存技術が活用できるため研究機関は5年としている。それぞれ2〜3年ごとに中間評価を行い、その時点での研究開発の進捗状況を確認する仕組みとなっている。

 2014年度(2015年3月期)はその第1回の中間評価年となっているが、現在のところは「スケジュール通りに進んでいる。光触媒の変換効率については当初計画以上の成果が出ている」とARPChemで光触媒の研究開発のチームリーダーを務める、東京大学 大学院 工学系研究科化学システム工学専攻 教授 堂免一成氏は語る。

photo 研究開発スケジュールと中間評価時における目標(クリックで拡大)※出典:NEDO
photo ARPChemでプロジェクトリーダーを務める三菱化学 執行役員・フェローの瀬戸山亨氏

 太陽光を利用して水から水素を取り出し有機物を作り出す方法としては、太陽光発電を利用しその電力で水を電気分解するという方法も取れる。こちらの方が既に確立されている技術でもあり、技術的には容易に実現できる。その中であえて人工光合成に取り組む理由として、ARPChemでプロジェクトリーダーを務める三菱化学 執行役員・フェローの瀬戸山亨氏は2つの理由を述べる。

 「1つの理由は、太陽光発電と電気分解設備を利用する仕組みでは、電気分解設備の初期コストが高くなり、導入への負担が大きくなる点だ。理論上では人工光合成の方が低価格で実現でき産業で活用しやすい。そしてもう1つの理由が人工光合成は日本が技術で勝てる領域だということ。太陽光発電や電気分解はある程度確立された技術で、日本の技術的な優位性はそれほどない。しかし、光触媒や人工光合成は日本が技術的にも強い領域だ。『技術で差別化を図り新たなビジネスモデルを構築する』ということを考えて人工光合成にチャレンジしている」(瀬戸山氏)。

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