2020年東京五輪は「水素社会」の見本市に、政府が技術課題解決に本腰自然エネルギー(1/3 ページ)

2020年の東京オリンピック・パラリンピックでは、「水素社会」が実際に体験できるようになる――。政府は東京五輪・パラリンピックにおいて世界に発信すべき9つの科学技術イノベーション領域を定め、その実用化計画を提示した。

» 2015年04月13日 09時00分 公開
[三島一孝スマートジャパン]

 内閣府では2015年4月10日に総合科学技術・イノベーション会議を開催。2020年東京オリンピック・パラリンピックまでに水素インフラを整備し、水素エネルギーシステムを実現することで「水素社会」の価値を世界に発信していく方針を示した。

 今回の取り組みは、政府の骨太方針や総合戦略2014に基づく「2020年オリンピック・パラリンピック東京大会に向けた科学技術イノベーションの取り組みに関するタスクフォース」の一環となるもの。有識者や各府省、東京都、組織委員会の協力のもと、大会での活用を見据えた9つのプロジェクトの実施計画をまとめた。

 9つのプロジェクトには「次世代都市交通システム」や自動翻訳システムなどを含む「スマートホスピタリティ」「新・臨場体験映像システム」「移動最適化システム」などがあるが、「水素エネルギーシステム」はその内の1つとなる(図1)。

photo 図1:2020年オリンピック・パラリンピック東京大会に向けた科学技術イノベーションの取組に関するタスクフォースで定められた9つのプロジェクト(クリックで拡大)※出典:内閣府

水しか排出しないクリーンな移動と暮らし

 水素エネルギーシステムプロジェクトでは、「水しか排出しない最新エネルギーで、移動・暮らしに次のクリーンを」をコンセプトとし、長期的な目標として「国内外での水素製造・貯蔵・輸送といった新たなエネルギーインフラの整備」と「日本での水素関連産業が世界市場で活躍」を置いている。そのために東京五輪で水素社会実現に向けた日本の可能性を世界に発信する狙いだ。

 具体的には、「水素を作る」という面と「水素を利用する」という面の両面でのインフラ整備を進めていく。水素製造を担う地域では再生可能エネルギー由来でのクリーンな水素を製造し首都圏へ運搬できるようにする。東京五輪会場を抱える首都圏では、これらの水素を生かして環境負荷の低い社会を実現する(図2)。

photo 図2:「水素エネルギーシステム」プロジェクトの2020年オリンピック・パラリンピック東京大会での展開イメージ(クリックで拡大)※出典:内閣府

 さらにこれらの計画では必要になる技術を明示し、その実現に向けた技術開発のロードマップを描いていることが特徴となる。

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