熱エネルギーを永続保存できる蓄熱素材を発見、損失ゼロの太陽熱発電実現に期待自然エネルギー(1/2 ページ)

東京大学大学院理学系研究科の大越慎一教授と筑波大学数理物質系の所裕子准教授らの研究グループは、永続的に熱エネルギーを保存できるセラミックス「蓄熱セラミックス(heat storage ceramics)」という新概念の物質を発見した。太陽熱発電システムや廃熱エネルギーの再生利用素材としての活用が期待される。

» 2015年05月14日 07時00分 公開
[三島一孝スマートジャパン]

 新たに発見した物質は、チタン原子と酸素原子からできた「ストライプ型-ラムダ-五酸化三チタン」といういう物質だ。ラムダ-五酸化三チタンは2010年に大越慎一教授らにより発見された新種の結晶構造をもった酸化チタン材料で、金属的な性質を示す。今回見つかった物質は、このラムダ-五酸化三チタンがストライプ状の形状を持ったものとなる。

 研究グループでは、同物質が相転移を利用することで230kJL-1(キロジュール毎リットル)の熱エネルギーを吸収、放出できることを確認したという。この熱エネルギーの大きさは水の融解熱の約70%、エチレングリコールの融解熱の約140%に相当する大きな熱量となる。保存した熱エネルギーは60MPa(メガパスカル)という圧力を加えることで取り出すことができる(図1)。

photo 図1:ストライプ型-ラムダ-五酸化三チタンで発見された新概念「蓄熱セラミックス」の性質。(a)加熱により230kJL−1の熱エネルギーを蓄え、弱い圧力(60MPa)で放出する。その他に(b)電流を流す(c)光を照射するという多彩な方法でエネルギーを蓄熱できる(クリックで拡大)出典:東京大学
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