「新電力」向け、電力関連業務を外注できる“クラウド型“人材サービス電力供給サービス

オンライン上で業務を受発注できるクラウドソーシングサービスを提供するクラウドワークスは、電力関連事業に注力する方針を発表した。電力の小売全面自由化に向けて新電力が増加していることを受け、電力会社への接続や補助金などの申請や受給管理などの業務を対象にクラウドソーシングの利用を推進していく。

» 2015年05月18日 09時00分 公開
[陰山遼将スマートジャパン]

 2016年4月から始まる電力の小売全面自由化。新たに開放される電力市場への参入を目指す特定規模電気事業者、いわゆる「新電力」が飛躍的に数を伸ばしている。新たに電力事業に取り組むことになる新電力にとっては、補助金申請や接続申請といった電力事業に関連した業務は新たな負担になることが想定される。これに着目したクラウドソーシングサービスを手掛けるクラウドワークスは2015年5月15日、新事業「クラウドソーシング BPO」(以下、BPO)を開始し、今後拡大が見込まれる電力関連事業でクラウドソーシングの利用を推進してく方針を発表した(図1)。

図1 「クラウドソーシング BPO」の概要 出典:クラウドワークス

 クラウドソーシングとは、群衆(クラウド)と業務の外部委託(アウトソーシング)を組み合わせた造語で、インターネットを利用して業務を受発注できるサービスだ。企業は業務を外注することで経営効率を上げることができ、受注する側は働く場所や時間に拘束されることなく報酬を得られるというメリットがある。主な利用例としては、ロゴやWebサイトの制作、原稿の翻訳などさまざまなものがあり、こうした業務を必要なスキルを持つ人材にオンライン上で委託できる仕組みだ。

 しかし「インターネットを通して業務を受発注」といっても、企業の内部業務などの場合、全てをクラウドソーシングで委託するには限界がある。こうした問題を解決するのが、今回発表したBPOだ。BPOは「ビジネス・プロセス・アウトソーシング」の略称で、クラウドワークスの社員が顧客企業に常駐して業務内容を把握し、その上で同社の既存のクラウドソーシング基盤を利用して適切な人材に業務を外注する仕組みとなっている。BPOの最初のターゲットとして、今後拡大が見込まれる電力事業関連の業務にフォーカスしたという。

 既にクラウドワークスは電力関連事業者を顧客としたBPOサービスの展開に着手しており、補助金申請者や電力会社への接続申請、電力需給管理などのアウトソーシングに向けた業務を開始している。さらに今後は、電力小売に関するリサーチやマーケティング、経理、コールセンター、書類作成といった業務へもBPOを拡大する方針で、クラウドソーシングの活用によって電力事業者の経営負担の削減に貢献していくという。2018年内に電力関連事業で10億円規模の業務のクラウドソーシング化を目指すとしている。

図2 補助金や電力会社への接続申請、需給管理のアウトソーシングを進める 出典:クラウドワークス

 クラウドワークスは2010年創業のベンチャー企業で、2014年12月に東証マザーズに上場。現在約60万人のクラウドワーカー(登録会員)が利用しており、クライアント企業は9万社になるという。同社は創業以降、クラウドソーシングによって中小企業とクリエイターをつなぐプラットフォサービスを展開してきたが、2014年1月からはエンタープライズ向けのサービスも提供している。トヨタ自動車、三菱UFJ・フィナンシャル・グループ、NTT、ホンダなどの大手企業の利用も進んでいるという。

クラウドワークス 代表取締役社長の吉田浩一郎氏

 同日に東京都内で開かれた会見に登壇した代表取締役社長の吉田浩一郎氏は「日本では正社員比率が半数以下まで下がっている一方、正社員でなければ社会からの信用が得にくいというのが現状。クラウドソーシングサービスの拡大によって、『企業は信用できる 個人は信用できない』ではなく『企業は信用できる 個人も信用できる』社会を創っていきたい」と語った。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.