新電力が500社を突破、1年間で3倍に増える動き出す電力システム改革(30)

小売全面自由化を1年後に控えて、新電力が急増中だ。2015年1月末の時点で届出件数は526社にのぼり、直近の1年間で3倍に拡大した。従来の企業向けの市場では新電力のシェアは4%にとどまっている。家庭向けの市場開放に伴う電力システム改革によって、どこまでシェアを伸ばせるか。

» 2015年02月06日 13時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

第29回:「電力市場の監視委員会が2015年内に発足、小売の競争と送配電の中立を図る」

 2000年から始まった電力小売の自由化で新電力(正式名称は「特定規模電気事業者」)が誕生した。最初に事業を開始したのは三菱商事グループのダイヤモンドパワーで、現在は中部電力の傘下にある。新電力の届出件数は2013年9月に100社を超えた後、2014年に入ってから一気にペースが加速した(図1)。

図1 新電力の届出件数。出典:資源エネルギー庁

 家庭を含む小売の全面自由化をはじめ、電力市場の競争を阻害してきた制度やシステムを抜本的に改革するプロセスが明らかになったからだ。従来は自由化と言っても電力会社が地域ごとに市場を独占する構造にほとんど変化はなく、新電力のシェアは10年以上が経過した現在でもわずか4%程度に過ぎない(図2)。

図2 自由化部門における新電力のシェア(全国の販売電力量に占める割合)。出典:資源エネルギー庁

 ようやく2015年4月から電力システム改革が始まり、電力会社と新電力が対等に競争できる市場環境が生まれる。2020年までに電力会社の発電・送配電・小売部門を分割する「発送電分離」を実施すれば、現在の新電力を含めて小売事業者が同じ条件で電力を調達して販売できるようになる。

 これまで企業向けの市場で新電力がシェアを伸ばせなかった最大の理由は、顧客に販売する電力を安定して調達することが難しいからである。日本の発電量の大半は電力会社10社と卸電気事業者2社(電源開発、日本原子力発電)が占めている。新電力が調達できるのは、一般企業の自家発電設備の余剰電力や卸電力市場などに限られてきた。

 新電力各社の販売電力量を見ても、大手のガス会社や商社などのグループ企業が上位に並ぶ(図3)。1社でシェアの半分近くを占めるエネットは、NTTファシリティーズ・東京ガス・大阪ガスの3社が共同で設立した新電力である。ガス会社をバックに安定した供給力を確保できる体制が強みだ。

図3 新電力各社のシェア(2013年度)。出典:資源エネルギー庁

 そのほかの新電力を加えると、上位15社のシェアは約9割に達する。500社以上がひしめく新電力の中で、ひとにぎりの会社しか事業を成り立たせることができない状況にある。しかし今後は電力会社の発電部門や卸電気事業者からも電力を調達できるようになって、販売力のある小売事業者はシェアを大きく伸ばせる可能性が高まる。

第31回:「広域機関が7種類の業務を4月1日に開始、500社を超える電気事業者が対象」

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