小水力発電で農地をイノシシから守る、農業用水路に簡易型の水車発電機自然エネルギー

農業用水路に簡易型の小水力発電設備の導入を進めている山口県で、新たに1カ所の農村でも運転が始まった。瀬戸内海に近い周南市の山間部にある農地をイノシシの被害から守るために、小水力発電の電力を使って電気柵を設けた。近くにはアジサイ園があり、園内の照明にも利用する。

» 2015年06月18日 07時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 山口県では農村を活性化する施策の1つとして、県や市町村が補助金を交付して小水力発電の導入を推進している。このほど周南市の農村でも簡易型の小水力発電設備を導入して発電を開始した(図1)。

図1 周南市の農業用水路に設置した小水力発電設備。出典:山口県農林水産部

 導入した場所は周囲に棚田が広がる「四熊(しくま)地域」で、アジサイの名所としても知られる。地元の住民90人で構成する農地保全会が県の支援を受けて取り組んだ。発電設備は山口県が2013年度に実証事業を通じて開発した簡易型で、水車の下側で水を受けて回転する「フロート式下掛水車」を利用する(図2)。

図2 簡易型の小水力発電設備。出典:山口県農林水産部

 この簡易型の小水力発電設備は小さな落差の水流でも発電できるため、農業用水路に適している。重さは9キログラムで簡単に設置できて、材質はさびにくいポリ塩化ビニルで作られている。発電能力は4.8kW(キロワット)と小さいものの、これまで電力を供給できなかった場所にも街路灯などを設置できる利点がある。

 四熊地区ではイノシシが出没して農作物を荒らす被害に悩まされてきた。新たに小水力発電の電力を利用して、農地の周囲に電気柵を設けることが可能になった(図3)。同様の対策は県内の田布施町の農地でも3月から始めて、サルの侵入を防ぐ効果を上げている。

図3 小水力発電の電力を電気柵に供給(後方に電気柵の支柱が見える)。出典:山口県農林水産部

 6月20日(土)には「四熊アジサイ祭り」を開催する予定だ。祭りの会場になるアジサイ園の照明にも小水力発電で電力を供給する。四熊地区は周南市の中心部から10キロメートルほどしか離れていない。アジサイ祭りに数多くの市民が訪れることで、地域の活性化につながることを期待している。

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