再生可能エネルギーの中でバイオマスだけは資源の種類が多様だ。バイオマス発電に使う資源の多くは木質を中心とする固体燃料だが、下水の汚泥などから作るバイオガスや生ごみなどの廃棄物の利用も増えてきた。バイオマス発電は欧米を中心に広がり、2014年の電力量は全世界で9%伸びた。
第5回:地熱発電が途上国に広がる、日本はケニアに抜かれて世界9位
生物由来のバイオマスの用途は大きく分けて3つある。発電のほかに、熱や温水を作り、自動車などの輸送機器でも大量のバイオ燃料が使われている(図1)。バイオマスを利用できる発電設備の容量は全世界で9300万kW(キロワット)に達した。
容量で見ると太陽光発電の半分程度だが、発電量は太陽光を上回る。2014年に全世界のバイオマス発電設備が生み出した電力量は4330億kWh(キロワット時)にのぼり、2013年の3960億kWhと比べて9.3%増加した。設備利用率(容量に対する実際の発電量)は平均で53%になる。
国別では米国が最も多くて、691億kWhの電力をバイオマスで作っている。米国の標準的な家庭の電力使用量(年間1万kWh)に換算して690万世帯分に相当する。総世帯数(1億2000万世帯)の約6%をバイオマスによる電力でカバーできる計算だ。次に多いのがドイツ(491億kWh)、中国(416億kWh)、ブラジル(329億kWh)の順で、日本は302億kWhで第5位に入る。
発電に利用するバイオマスの75%は「固体バイオマス」である(図2)。木質ペレット/チップのほかに、南米などで多く使われているバガス(サトウキビの搾りカス)や黒液(木質チップから繊維を抽出する工程で排出する濃縮液)も固体バイオマスに含まれる。残りの17%は下水の汚泥などから生成するバイオガス、7%は都市から排出する生ごみなどの廃棄物、1%は農作物などから作るバイオ燃料だ。
固体バイオマスで代表的な木質ペレット(木くずを圧縮・成型した円筒形の燃料)の生産量は過去10年間で約5倍に拡大している(図3)。2014年には全世界で2400万トンにのぼる木質ペレットが作られて、2013年から9%増えた。生産量の5割以上をEU(欧州連合)が占めていて、北米と合わせると9割近くになる。
一方で液体のバイオ燃料はガソリン自動車が主な用途である。生産量が最も多いのはバイオエタノールで、サトウキビやトウモロコシなどの農作物を発酵させて蒸留する製法が一般的だ。最大の生産国である米国ではトウモロコシ、第2位のブラジルではサトウキビから作るバイオエタノールが多い(図4)。
このほかにEU諸国を中心にバイオディーゼル燃料も広く使われている。菜種や大豆を搾って作った植物油をディーゼル自動車などの燃料に利用する。さらに植物油に水素を添加したバイオディーゼル燃料(水素添加植物油)が米国やオランダ、シンガポールで作られるようになってきた。
バイオマスの資源は木や農作物が多いことから、環境破壊の懸念も各国で広がっている。再生可能エネルギーは化石燃料のように枯渇しないことがメリットの1つである。バイオマス資源の消費量が適正な水準を超えないようにするための取り組みが世界規模で求められる。
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