第3世代は水素も生かす、3段階で発電するトリプルコンバインド火力発電の最新技術を学ぶ(4)(1/2 ページ)

水素を使って発電できる燃料電池が火力発電と合体する。10年後の2025年に実用化を目指す第3世代の火力発電は、ガスタービン・蒸気タービン・燃料電池の3種類を組み合わせたトリプルコンバインドサイクルが特徴だ。CO2の排出量は現在の第1世代と比べて2〜3割も減少する。

» 2015年08月13日 15時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

第3回:「石炭をガス化する第2世代、LNG火力とともに複合発電へ」

 家庭でも発電できる「エネファーム」は燃料電池の代表格だ。都市ガスから水素を作って、酸素と反応させて電力と熱を供給することができる。これと同じ原理の燃料電池が大規模な火力発電所でも使われるようになる。第2世代でガスタービンと蒸気タービンによる複合発電(コンバインドサイクル)へ進化した次には、燃料電池を加えて3段階で発電する「トリプルコンバインドサイクル」へ向かう。

 LNG(液化天然ガス)を燃料に使う火力発電では「ガスタービン燃料電池複合発電(GTFC:Gas Turbine Fuel Cell combined cycle)」、石炭の場合は「石炭ガス化燃料電池複合発電(IGFC:Integrated coal Gasification Fuel Cell combined cycle)」が第3世代の中核になる技術だ(図1)。どちらも2025年までに実用化することが政府のロードマップに盛り込まれた。

図1 LNG火力と石炭火力の進化の方向性(画像をクリックすると拡大)。出典:資源エネルギー庁

メタンガスから水素を抽出して燃料電池へ

 CO2(二酸化炭素)の排出量も格段に少なくなる。特にCO2排出量が問題になる石炭火力で比較してみると、従来型の「亜臨界圧(Sub-C:Sub Critical)」から第1世代の「超々臨界圧(USC:Ultra Super Critical)」で1割減る(図2)。さらに第2世代の「石炭ガス化複合発電(IGCC:Integrated coal Gasification Combined Cycle)」は2割以上に、第3世代のIGFCではSub-Cと比べて34%も少なくなる見通しだ。

図2 石炭火力の技術方式によるCO2排出量(設備容量100万kWの場合)。出典:資源エネルギー庁

 同様にLNG火力でも第2世代の「ガスタービンコンバインドサイクル(GTCC)」から第3世代のGTFCではCO2排出量が2割も違う。燃料電池を組み込んだGTFCは現時点で想定できる火力発電の中で最高の効率を発揮する技術である。

 GTFCの燃料になる天然ガスの主成分はメタン(CH4)で大量の水素を含んでいる。メタンから水素を抽出して、燃料電池に供給すれば発電することができる。GTFCでは家庭用のエネファームよりも発電効率が高い「固体酸化物型燃料電池(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell)」を使う(図3)。

図3 GTFCの発電設備。出典:資源エネルギー庁(三菱日立パワーシステムズの資料をもとに作成)

 最初に燃料電池で発電した後でもガスが残るため、それも生かしながら次のガスタービンで発電する。ガスタービンで発電する時には、ガスを燃焼するために空気(酸素)を送り込む必要がある。発電後に排出する空気は燃料電池に戻して、水素と反応させる仕組みになっている。さらに排熱を最後の蒸気タービンで利用する点は通常のコンバインドサイクルと同じだ。

 GTFCは3段階で発電することによって、燃料の熱エネルギーから電気エネルギーへ変換する効率が63%程度まで上がる。国内では三菱日立パワーシステムズを中心にGTFCの開発が進んでいる。発電能力が10万kW(キロワット)程度の中小型の設備を2020年までに開発して、2025年をめどに実用化を目指す(図4)。

図4 中小型GTFCの設備イメージ。右側に並ぶ円筒形の装置が燃料電池。出典:三菱日立パワーシステムズ
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