米国のオバマ大統領が新たな再生可能エネルギーの拡大策を発表した。家庭と企業の双方に向けて融資制度を拡充するほか、太陽光発電のコストを低下させる技術開発プロジェクトを促進する。欧州の先進国と比べて出遅れている現状を改善して、温室効果ガスの削減につなげる狙いだ。
オバマ大統領が米国時間の8月24日に発表した新しいエネルギー政策は太陽光発電に注力する点が特徴だ。米国は広大な国土があるにもかかわらず太陽光発電の導入量が少なく、2014年の時点でも発電量は風力の10分の1以下に過ぎない(図1)。国内で生産する石炭や天然ガスの価格が安いことも影響しているが、日本と同様に地球温暖化対策の観点から火力発電の縮小を迫られている。
新たな政策の柱は2つある。1つは太陽光発電を中心に再生可能エネルギーの導入を促進するための融資制度を拡充する。融資制度には企業向けと家庭向けがあって、企業向けでは総額100億ドル(約1兆2000億円)を超える融資制度を拡充する予定だ。
もう1つの柱は太陽光発電の導入コストを低減するための技術開発プロジェクトである。11種類のプロジェクトに2400万ドル(約29億円)の拠出を決めた。太陽光パネルの発電量を倍増させることを目標に、大学や企業の技術開発を支援する。その中にはパナソニックのボストン研究所とシャープの米国研究所のプロジェクトも含まれている。
地球温暖化を防止するために、米国はCO2(二酸化炭素)をはじめとする温室効果ガスの排出量を2025年までに2005年比で26〜28%削減する目標を掲げている。そのためにエネルギーの消費効率を2030年までに国全体で2倍に高めながら、再生可能エネルギーの比率を20%程度まで引き上げる計画だ。
再生可能エネルギーの比率が2030年で20%程度では、日本の目標値(22〜24%)よりも低い。実際のところ米国は日本と同様に再生可能エネルギーの導入が欧州の先進国と比べて遅れている(図2)。しかも国全体の発電量は日本の4倍にも達することから、再生可能エネルギーの比率を引き上げることは容易ではない。
米国政府は2007年に太陽光発電システムの導入コスト低減プログラム「SunShot Initiative」を開始して、過去5年間で導入コストを半減させた(図3)。それに伴って太陽光発電の導入量が増えて、2014年末の時点では累積で1800万kW(キロワット)を超える水準まで拡大している(図4)。
2014年の新規導入量は620万kWにのぼり、中国と日本に次いで第3位の規模になった(図5)。これまで米国の再生可能エネルギーの中心だった風力の新規導入量(490万kW)を上回っている。新しい政策が効果を発揮すれば、さらに太陽光発電の導入量が増加していく。その一方で日本では太陽光発電を抑制する動きが進んでいる。近いうちに米国が日本を抜いて第2位に躍進する可能性が大きくなってきた。
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