環境負荷の少ない次世代冷媒、ダイキンが特許を無償開放法制度・規制

空調機などにおいて熱を運ぶ役割を担う冷媒は、一部の種類がオゾン層の破壊や地球温暖化につながるとして世界的に規制の強化が進んでいる。そこでダイキン工業は地球温暖化影響の少ないとされる「HFC−32」冷媒を用いた空調機の製造や販売に関する93の特許を、全世界に無償開放する。

» 2015年09月11日 09時00分 公開
[陰山遼将スマートジャパン]

 ダイキン工業(以下、ダイキン)は2015年9月10日、従来の冷媒に比べて地球温暖化影響の少ないとされる「HFC−32」冷媒を用いた空調機の製造や販売に関する合計93の特許を、全世界に無償開放すると発表した。

 空調機などにおいて熱を運ぶ役割を担う冷媒にはさまざまな種類がある。しかしその採用にはオゾン層の保護や地球温暖化への影響に加え、安全性、経済性などさまざまな要素を考慮しなくてはならない(図1)。

図1 フロン類の地球温暖化への影響 出典:経済産業省

 HFC−32はオゾン層を破壊しない冷媒で、エネルギー効率が高く、安価で再生しやすいのが特徴。一般的に使用されているR-410A冷媒に比べて、地球温暖化係数(GWP)が3分の1で、空調機による環境影響を軽減する次世代冷媒の1つとして注目されている。

 ダイキンによれば今後も増加が予想されるR−410A冷媒を全てHFC−32へ置き換えると、転換しなかった場合と比較して2030年におけるHFC(ハイドロフルオロカーボン)による温暖化影響をCO2換算値で最大24%削減することができるという。

 ダイキンは2012年から世界で初めてHFC-32冷媒を利用したエアコンの販売を開始。オゾン層を破壊する冷媒の段階的な廃止に向けた取り組みを加速するため、既に2011年から新興国においては今回の特許を無償開放している。さらに先進国においても一定の条件下で金銭の支払いが無くても利用できるようにし、環境影響の少ないHFC−32への転換を支援してきた。

 だが近年、先進国においても気候変動問題への対応として、GWPの低い冷媒への転換が急速に進みだしている。欧州では2014年にHFCの温暖化影響を抑制するための規制である「Fガス規制」により冷媒の総量規制が法制化され、日本でも2015年4月から「フロン排出抑制法」が施行。冷媒の取り扱いに関する規制の強化が国際的に進んでいる。

 ダイキンはこのような状況を受け、今回先進国においても新興国と同様に無償で開放することを決定。環境負荷の少ないHFC−32冷媒を利用した空調機の普及を後押しし、空調市場の成長・拡大を促すとともに地球温暖化抑制にも貢献する狙いだ。

 なお、今回開放された特許はHFC-32の冷媒そのものを製造するためのものではなく、HFC−32冷媒を用いた空調機の製造や販売に関するもの。HFC-32は混合冷媒の一部として以前からから空調機に使用されており、自由に市場から調達することが可能である。

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