電力システム改革の第1弾で2015年4月に発足した「電力広域的運営推進機関」は中立の立場で全国の送配電ネットワークを運用する役割を担う。事業者から苦情や相談を受けて調停する機能もあり、最初の6カ月間で33件を受け付けた。その多くは発電設備の接続に関する電力会社の対応だった。
第46回:「小売電気事業者に8社を追加登録、大阪ガスや大和ハウスが電力販売へ」
「電力広域的運営推進機関」(略称:広域機関)が2015年度の上半期(4〜9月)に事業者から受けた苦情・相談は合計で33件にのぼった。申し出た事業者のうち15件は小売電気事業者、16件は発電事業者が占めた(図1)。一方で苦情・相談の対象になったのは1件を除いて一般電気事業者(電力会社)である。
苦情・相談の内容は「系統アクセス」に関するものが圧倒的に多かった。系統アクセスは発電設備を電力会社の送配電ネットワークに接続することを意味する業界用語だ。発電事業者は事前に電力会社に接続を申し込んで契約を結ぶ必要がある。その際に電力会社から工事費を請求されるが、費用や工期に納得できない、あるいは回答が来ないために運転開始が遅れてしまう、といった苦情・相談が多くを占めている(図2)。
このほかに電力会社による出力制御などを加えると、発電設備の接続に関する苦情・相談が合計で28件あった。対象の電源は太陽光が15件で過半数を占めていて、次いで火力が8件、バイオマスが3件、水力が2件だ(図3)。そのうち設備容量が2000kW(キロワット)以上の「特別高圧」が13件ある。規模の大きい太陽光発電設備の接続に関して問題が数多く発生している状況がうかがえる。
広域機関は苦情・相談を受けると、内容によって内部で対応するほか、電力会社に問い合わせて対応を求めることもある。たとえば電力会社から系統アクセスの回答延期を通知された発電事業者のケースでは、広域機関から電力会社に対して進捗状況や回答時期の見通しを通知するよう依頼して了承を取りつけている。
ただし苦情・相談の中には、事業者の責任で解決すべきことも含まれていて、すべてのケースで電力会社の対応に問題や改善すべき点があるわけではない。広域機関は33件の苦情・相談のうち、10月23日までに12件の対応を完了した。苦情・相談は電話とメールで受け付けている。
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