日本が開発した温室効果ガス観測専用衛星「いぶき」が2009年から地球の大気全体における二酸化炭素(CO2)の濃度を測定している。最新の分析結果によると、CO2の平均濃度は月ごとに変動しながら上昇中だ。2009年に385ppm程度だった濃度が2015年には400ppmに近づいてきた。
地球温暖化の要因になる二酸化炭素(CO2)の濃度が大気全体で上昇を続けている。日本のJAXA(宇宙航空研究開発機構)、NIES(国立環境研究所)、環境省の三者が共同で開発・運用中の温室効果ガス観測専用衛星「いぶき」のデータを分析して明らかになった(図1)。
「いぶき」は地球から高度666キロメートルの軌道を3日間で1周する。2009年1月23日に世界初の温室効果ガス観測専用衛星として打ち上げられた。CO2とメタン(CH4)の濃度を観測するセンサーを備えていて、地表面から大気の上端までの「全大気」におけるCO2の総量を観測できる点が特徴だ。地球温暖化のリスクを予測するうえで有効なデータを提供することができる。
JAXAなどが「いぶき」の6年以上にわたる観測データをもとに、全大気のCO2平均濃度を月別に算出した。その結果、北半球で植物の光合成が活発な夏になると平均濃度が下がり、冬になると上がる傾向を繰り返しながら、経年のトレンドは一貫して上昇を続けている(図2)。
「いぶき」が観測を開始した2009年の時点では、CO2の平均濃度は385ppm前後だった。直近の2015年には395ppmを超えて400ppmに近づいている。遅くとも2016年内には400ppmを超える見通しで、地球温暖化のリスクがますます高まっていく。化石燃料の消費量を地球規模で抑える必要性を示している。
地域別のCO2排出量を2月と8月で比較すると、2月には北米や南米の北部、ヨーロッパの西部で排出量が多いのに対して、8月には南米の中部とアフリカの中部で排出量が多くなる(図3)。それぞれ植物の光合成によるCO2の吸収量が少なくなる時期に、化石燃料による排出量が上回る結果と考えられる。
「いぶき」の観測データに基づく全大気のCO2平均濃度はNIESのウェブサイトで11月16日から公開を開始した(速報値の掲載ページへ)。2017年度には現在の「いぶき」の後継機を打ち上げる計画で、観測データの精度がさらに向上する見込みだ。
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