EVの使用済み蓄電池で離島の系統電力を安定化、日本初の実証事業を開始蓄電・発電機器

再生可能エネルギーの活用を進める鹿児島県薩摩川内市は、同市属する甑島(こしきしま)に電気自動車の使用済み電池を活用した大型蓄電設備を設置した。住友商事が手掛けたもので、これを活用して離島の小さな系統を保護しながら再生可能エネルギーの導入拡大を図っていく。

» 2015年11月20日 15時00分 公開
[陰山遼将スマートジャパン]

 鹿児島県薩摩川内市と住友商事は、同市に属する離島の甑島(こしきしま)に、電気自動車(EV)の使用済み電池を再利用した大型蓄電池設備(以下、EVリユース蓄電池システム)を建設した。今後「甑島蓄電センター」(図1)の名称で運用を開始し、自治体が中心となって離島に再生可能エネルギーを普及させるための共同実証事業を展開していく。

 離島のように小さな系統では、出力変動が大きい再生可能エネルギーを導入する場合、蓄電池などを導入して系統の安定化を図る場合が多い。今回の実証事業ではこの蓄電池として、EV36台分の使用済み電池を活用する。EVリユース蓄電池システムを段階的に電力会社の系統へ接続し、甑島に点在する複数の再エネ可能エネルギーの出力変動に対応していく。これにより島内にできるだけ多くの再可能エネルギーを導入していく計画だ。

図1 甑島蓄電センター外観イメージ図と、導入した蓄電池コンテナ

 甑島蓄電センターはEVリユース蓄電池システムに加え、出力800kW(キロワット)の太陽光発電設備も備える。電力会社以外の事業者が、こうした蓄電池システムを単独で電力系統につなげる国内初の事例になるという。実証事業の実施については、九州電力からの技術協力および助言を受け、系統に接続する蓄電池の安全な運用方法や蓄電池の効果を見極めながら、自治体モデル事業としての運用ノウハウを構築する。

 今後の計画では、新たに蓄電池を導入する場合と比較し、経済性に優れるEVリユース蓄電池システムを用いた低コストな事業モデルの確立を目指す。将来は補助金に頼らずに再生可能エネルギーの普及させられる環境を整備したい考えだ。

 事業に協力する住友商事は、再生可能エネルギーの普及とともに国内外で電力系統の安定化ニーズが高まる中、蓄電池の用途拡大を図る取り組みを進めてきた。今回の事業はこれまでは技術実証レベルにとどまっていた蓄電池の活用事業を、経済性が成立する事業モデルへ進化するための試金石と位置付けるとしている。

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