海底に沈め海水で冷やすデータセンター、マイクロソフトが実証省エネ機器(1/2 ページ)

拡大するデータセンターの大きな課題となっているのが、サーバが生み出す熱とその冷却に要する電力の問題だ。その問題に対し、ユニークな解決策の実証に取り組むのがマイクロソフトの「Project Natick」である。

» 2016年02月04日 09時00分 公開
[三島一孝スマートジャパン]

 米国マイクロソフトが推進している研究プロジェクトである「Project Natick」は、水中にデータセンターを建設し運用することを目指すものだ。2013年に着想し2014年8月から本格的にプロジェクトを開始した。最初のプロトタイプは2015年8〜11月にかけて米国西海岸の太平洋沖1キロメートルの地点で実証運用を行った。これらの結果はマイクロソフトがクラウドデータセンターの課題としている迅速なプロビジョニング、コスト低減、高い応答性、環境持続性などの点で反映されるという(図1)。

photo 図1 「Project Natick」で海中に設置されるデータセンター 出典:Project Natick

 そもそも、なぜデータセンターを海底に設置しよういう試みが生まれたのだろうか。データセンターの省エネ性能には「PUE(Power Usage Effectiveness)」という単位が使われる場合が多い。PUEとは「データセンターの総入力電力」を「IT負荷電力」で割った数値である。例えば、IT機器が占める電力が30%だとすると、PUEは3.3ということになる。つまり、それだけデータセンターでは本来の目的であるサーバを駆動させること以外のことに多くの電力が消費されていることが分かる。その「本来の目的以外の電力」で最も大きいのが、サーバの発する熱を冷やす空調によるものだ。

 データセンターの省エネ化を実現するためには、できる限り電力を使ってサーバを冷やすのではなく、自然の力を使って冷却することが望ましい。そのため、周囲を水でおおわれた海底にデータセンターを設置し、海水で冷やし続けるという発想が生まれたというわけだ。

 クラウドコンピューティングは今や経済成長の大きな活力であり、そのカギを握るデータセンターの効率的な運用は、重要なポイントになると見られている。一方で、全世界の主要な人口密集都市の半分以上が海の近くに存在する。「Project Natick」では、これらの状況も踏まえ、これらの人口密集地帯に近くの海底にオフショアのコンテナ型データセンターを設置するビジョンを描く。海底は簡単にデータセンターの冷却が可能である他、再生可能エネルギーの活用や環境制御なども行えるという利点があるとしている(図2)。

photo 図2 開発したデータセンターはコンテナ型をしており、人口密集地帯の近くの海底に簡単にデータセンターを増設するような未来像を描く 出典:Project Natick
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