パナソニックがHEMS普及に全力投球する理由スマートエネルギーWeek 2016(1/2 ページ)

パナソニックは「PV EXPO 2016」に出展し、HEMSの普及に向けた取り組みをアピールした。家電の連携制御などの他、無料のスマートフォンアプリによる付加価値などを提案した。

» 2016年03月09日 07時00分 公開
[三島一孝スマートジャパン]

 パナソニックは、エネルギーの総合展示会である「スマートエネルギーWeek 2016」(2016年3月2〜4日、東京ビッグサイト)内の「PV EXPO 2016」に出展。「スマートHEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)」の価値を訴求した(図1)。

photo 図1 PV EXPO 2016のパナソニックブースでの「スマートHEMS」の提案

 PV EXPOでは、同社のHIT太陽電池のモジュール品質や2015年モデルから新たに採用した低負担で作業の短縮が可能な「PS工法」などのアピールも行っているが、提案の軸として大きな比率を割いたのがHEMSである。

 同社は早期からHEMSへの取り組みを強化。2012年からスマートHEMSとして、創畜連携システムや、家電を自動でコントロールして節電を行える制御装置「AiSEG(アイセグ)」などを展開。2014年には住宅分電盤をHEMS対応とできる「スマートコスモ」の提供を開始している。

積極的な「スマートコスモ」への投資

 「スマートコスモ」は分岐電流センサーを標準搭載するAiSEGと連携可能な住宅分電盤である。同分電盤を導入しておけば簡単に電気の使用量を把握できHEMS対応とできる他、太陽光発電設備や蓄電池などの創エネ・畜エネ機器やHEMSを後からでも簡単に導入できるなどのメリットがある。

 同社ではこの「スマートコスモ」の販売拡大のために、2015年9月に従来品に比べ8〜18%の値下げを行っている。今までは、通常の分電盤に比べて価格的な付加価値を乗せた販売としていたが、値下げにより通常の分電盤と同等価格とし、主力製品としての普及を目指すこととした。

 さらに、総額10億円の投資を行い、スマートコスモの生産能力を大幅に拡張する。従来の生産能力が年産2万4000台だったのを、2015年10月から年産18万台に増強。2016年度には年産36万台とする計画でわずか2年で生産能力を15倍に引き上げる狙いだ(関連記事)。

 HEMSを求める市場環境の醸成にも力を注ぐ。スマートフォンアプリを開発し、HEMSとの連携により「電気の“見せる化”」を推進。季節や地域に合わせた省エネアドバイスをプッシュ通知で配信する他、使い過ぎている家庭内の電力領域を示す「使い過ぎチェック」、他世帯と比較する「ランキング」などの機能を搭載しており、これらを無料提供している。「HEMSを訴えても一般消費者にはなかなか伝わらない。スマートフォンなどと連携することでHEMSを使う価値を理解してもらえるようにしたい」(ブース担当者)としている(図2)。

photo 図2 HEMS連携スマートフォンアプリ。開発費はかけているが無料で提供し、HEMS市場の醸成に力を注ぐ

 パナソニックがこれほどまでにHEMS市場拡大への積極的な投資を進める理由には何があるのだろうか。

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