人工光合成で水素を製造するシート、太陽光に反応する光触媒が水を分解自然エネルギー(1/2 ページ)

再生可能エネルギーからCO2フリーの水素を製造する試みの1つに、光触媒を使って水を分解する方法がある。NEDOなどの研究チームは2種類の光触媒を混合したシートを使って効率的な水素の製造方法を開発中だ。最新の研究成果では太陽光エネルギーのうち1.1%を水素に変換することができた。

» 2016年03月14日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 国が2012〜2021年度の10年計画で実施中の「人工光合成プロジェクト」で、新たな研究成果が生まれた。太陽光に反応する光触媒を組み込んだシートを使って水素を製造する試みだ(図1)。

図1 混合粉末型の光触媒シートによる水分解。出典:NEDOほか

 光触媒は太陽光や蛍光灯の光が当たると反応して、電子を発生する特性を持っている。この反応を利用して水を分解することができる。人工的な光触媒で代表的なものは二酸化チタン(TiO2)である。植物の光合成を促進する葉緑素(クロロフィル)も光触媒の一種だ。

 プロジェクトを担当するNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が人工光合成化学プロセス技術研究組合(ARPChem)と共同で2種類の光触媒を開発している。1つは水素を発生させるタイプで、もう1つは酸素を発生させるタイプだ(図2)。

図2 光触媒の例。出典:NEDOほか

 この2種類の光触媒を粉末状にして、混合した状態でシートを作成した。ガラス基板の上に粉末状の光触媒を塗布してから、水の分解で発生する電気を流すための導電層を蒸着する方法である(図3)。NEDOとARPChemのほかに、東京大学とTOTOが参加した共同研究チームがシートの開発にあたった。

図3 混合粉末型の光触媒シートを作成する方法(粒子転写法)。出典:NEDOほか

 開発した混合粉末型の光触媒シートを水中に沈めて太陽光を当てると、水を分解して水素と酸素が発生する仕組みだ。研究チームの実験では、長時間にわたって安定して水素と酸素を発生させることができた(図4)。太陽光エネルギーから水素に変換する効率は1.1%である。プロジェクトの最終目標は2021年度までに10%の変換効率を達成することだ。

図4 水素と酸素の発生量。出典:NEDOほか
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