小さな離島で再生可能エネルギー7割へ、台風を避けながら風力発電と太陽光をエネルギー列島2015年版(47)沖縄(1/3 ページ)

火力発電の依存度が高い沖縄県で、小規模な離島の電力源を再生可能エネルギーに転換するプロジェクトが進んでいる。台風を避けられる可倒式の風力発電所を中核に、太陽光発電と蓄電池を組み合わせて島内の需給バランスを安定させる試みだ。沖縄本島にも大規模なメガソーラーが増えてきた。

» 2016年03月15日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 沖縄本島から南西に約350キロメートル離れた多良間島(たらまじま)に、2基目の「可倒式風力発電設備」が2月26日に運転を開始した(図1)。発電能力は245kW(キロワット)で、2基を合わせると最大490kWの電力を供給できる。多良間島の電力需要は最大でも1000kW程度である。強い風が安定して吹けば、島内の電力需要の多くを風力発電でまかなえる。

図1 「多良間可倒式風力発電設備」の2号機の全景。左下に見えるのが1号機。出典:沖縄電力

 導入した風力発電設備はフランス製で、風車を支えるタワーを沖縄電力グループのプログレッシブエナジーが製作した。風車の羽根は2枚しかなくて、回転直径は32メートルである。タワーの高さは38メートルだ。

 このタワーには支線ワイヤーと補助タワーを備えていて、油圧ウインチで風車を傾けて地面まで倒すことができる(図2)。沖縄県は亜熱帯の海洋性気候のために、台風が頻繁に襲来する。台風が近づいた時には風車を倒して暴風に備える。最大85メートル/秒の風速まで耐えられる設計になっている。

図2 風車とタワーを倒した状態(上)、可倒式風力発電設備の構造(下)。出典:沖縄電力

 独自に電力源を確保しなくてはならない沖縄の離島では、重油を燃料に使ってディーゼル発電で電力を供給するケースが多い。環境保護の点からも再生可能エネルギーの利用拡大が求められている。離島に可倒式の風力発電設備を導入できるメリットは大きく、これまでに多良間島の2基を含めて4つの島に合計7基を導入した。

 沖縄県では小規模な離島の電力を100%再生可能エネルギーに転換するプロジェクトを2013年度から進めている。可能性が大きい3つの離島を対象に、風力発電と太陽光発電の候補地を選んで導入量を拡大していく計画だ。

 対象になった離島は沖縄県で最も東側にある北大東島(きただいとうじま)、日本の有人島では最も南にある波照間島(はてるまじま)、そして多良間島である(図3)。多良間島では2014年度に5%だった再生可能エネルギーの比率を70%まで高めることが当面の目標だ。

図3 沖縄本島と主要な島の距離。出典:沖縄県商工労働部

 以前は島内に250kWの太陽光発電設備があるだけだったが、可倒式の風力発電設備2基が加わり、さらに隣接地に2基を追加して合計4基に拡大する(図4)。このほかに旧・多良間空港の滑走路に沿って1.5MW(メガワット)の太陽光発電設備を建設する計画がある。すべての発電設備が稼働すれば目標の70%に到達する。

図4 多良間島の全景(上)、再生可能エネルギーの導入候補地(下)。WT:風力発電、PV:太陽光発電。WT1とWT2は導入済みの可倒式風力発電設備。出典:沖縄県商工労働部
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