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» 2016年04月08日 09時00分 UPDATE

法制度・規制:九州で原子力発電所の運転は続く、「遠く離れた住民」に悪影響は及ばないと判断 (1/2)

再稼働した「川内原子力発電所」に対して地域の住民が運転停止の仮処分を求めていたが、裁判所は申し立てを棄却した。3月に運転停止が決まった「高浜発電所」のケースと大きく違う点は、危険性の立証責任を住民側に求めたことだ。原告が「遠く離れた住民」であることを理由に挙げている。

[石田雅也,スマートジャパン]

 九州電力の「川内(せんだい)原子力発電所」は現時点で稼働している国内唯一の原子力発電所だ(図1)。地域の住民が運転停止の仮処分を2度にわたって求めたが、鹿児島地方裁判所による棄却決定(2015年4月)に続いて、福岡高等裁判所も4月6日に棄却を決定した。

sendai3_sj.jpg 図1 「川内原子力発電所」の全景。出典:九州電力

 これにより九州電力は川内原子力発電所の1号機(2015年8月に再稼働)と2号機(同11月)の運転を継続できることになった。2基を合わせた発電能力は178万kW(キロワット)にのぼる(図2)。九州電力は夏と冬のピーク時の供給力(約1700万kW)のうち1割以上を原子力で確保する。

sendai2_sj.jpg 図2 「川内原子力発電所」の概要。出典:九州電力

 仮処分の決定に対して九州電力は次のようなコメントを発表した。「今回の決定は川内原子力発電所の安全性は確保されているとの当社のこれまでの主張が裁判所に認められたものであり、妥当な決定をいただいたものと考えております。」

 同様の原子力発電所の運転停止を求めた仮処分では、1カ月前の3月9日に、関西電力の「高浜発電所」に対して大津地方裁判所が住民の申し立てを認める決定を下したばかりだ。どちらのケースにも共通する論点は、原子力発電所の危険性が住民の「人格権」を脅かすかどうかである。

 人格権は個人が社会生活を営むうえで必要な利益を保護するための権利で、生命・自由・名誉などの利益を侵害すると不法行為になる。川内と高浜の両方とも、原子力発電所の周辺地域に暮らす住民が人格権の侵害のおそれを理由に運転停止を申し立てた。ところが高浜のケースでは人格権の侵害に対する立証責任が電力会社側にあると判断したのに対して、川内のケースでは住民側にあると結論づけたことで結果が逆になった。

 原則として人格権の侵害については原告に立証責任がある。通常であれば原告の住民側が人格権の侵害の可能性を立証する必要があるが、原子力発電所の設備に関しては電力会社が重要な情報を所有しているために住民には立証がむずかしい。この点を裁判所が重視して、高浜のケースでは電力会社に人格権を侵害するおそれのないことを立証するように求めた。

 一方の川内のケースでは裁判所が抽象的な表現を使いながら、人格権の侵害に関する立証責任は住民側にあると結論づけた。その理由は原告が「原子力発電所から遠く離れた地域の住民」であるという点だ。原告は鹿児島・宮崎・熊本県の住民だが、具体的な住所は明らかにされていない。裁判所の判断から推測すると、川内原子力発電所が立地する薩摩川内市や近隣地域の住民ではないと考えられる(図3)。

sendai5_sj.jpg 図3 「川内原子力発電所」の位置と周辺地域。出典:九州電力
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