福島県産の水素を東京へ、再生可能エネルギーが200キロの距離を越える自然エネルギー(1/2 ページ)

東京都と福島県は再生可能エネルギーによる水素の製造から輸送・貯蔵・利用までの取り組みを共同で加速させる。国の産業技術総合研究所を加えた研究開発プロジェクトを通じて、2020年の東京オリンピック・パラリンピックで福島県産のCO2フリーの水素を活用できるようにする計画だ。

» 2016年05月19日 11時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 東京都と福島県がCO2(二酸化炭素)フリーで作る水素の活用に向けて5月17日に基本協定を締結した。再生可能エネルギーが豊富な福島県で製造したCO2フリーの水素を東京まで輸送して、今後の普及が見込まれる燃料電池システムや燃料電池自動車に供給する構想だ(図1)。東京都が目指す水素社会を促進しながら、福島県のエネルギー産業を拡大して復興を後押しする。

図1 福島県産のCO2フリー水素を東京都内で活用するイメージ。出典:福島県

 基本協定を通じてCO2フリー水素の製造・輸送・貯蔵・利用に関する共同研究を加速させるほか、人材育成や情報発信にも両者で取り組む。共同研究には国立の産業技術総合研究所(産総研)と東京都の環境科学研究所が参画する。2020年度までの5年間で研究開発を進めて、東京オリンピック・パラリンピックで成果を示す。

 東京都はCO2を排出しない水素エネルギーによる低炭素社会を目指したロードマップを掲げている。2020年には水素ステーションを都内35カ所に増やすほか、燃料電池自動車を6000台、燃料電池バスを100台以上、家庭用の燃料電池システムを15万台に増やす目標だ(図2)。CO2フリーの水素を大量に消費するためには、再生可能エネルギーによる水素の製造量を拡大する必要がある。

図2 東京都が目指す「水素の普及拡大に向けたロードマップ」(画像をクリックすると2030年まで表示)。出典:東京都

 一方の福島県では再生可能エネルギーが急速に拡大中で、太陽光や風力を中心に県内各地で続々と発電設備が運転を開始している。世界最大級の浮体式による洋上風力発電の実証研究プロジェクトも軌道に乗り始めた。政府は福島県の復興を促進するために「福島新エネ社会構想」を策定中で、再生可能エネルギーと水素エネルギーを2本柱に新しいエネルギー産業を生み出す方針だ(図3)。

図3 「福島新エネ社会構想」の基本方針(画像をクリックすると拡大)。出典:資源エネルギー庁

 東京都と福島県による連携を国も支援して、2020年の東京オリンピック・パラリンピックでは未来に向けた水素社会のモデルを全世界に発信する。

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