トヨタの工場で水素を製造、太陽光発電でCO2フリーに自然エネルギー(1/2 ページ)

福岡県にあるトヨタ自動車の工場で再生可能エネルギーを利用して水素を製造する実証プロジェクトが始まる。太陽光発電の電力を使って水を電気分解する方法で、CO2を排出しない水素を製造する試みだ。製造した水素は工場内の燃料電池フォークリフトや定置用燃料電池で自家消費する。

» 2016年06月30日 07時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]
図1 「宮田工場」の全景。出典:トヨタ自動車九州

 トヨタ自動車の九州地域における主力の製造拠点である「宮田工場」では、高級車の「レクサス」を中心に年間43万台を生産する(図1)。この大規模な工場の構内で、官民連携による水素エネルギーの実証プロジェクトを実施することが決まった。

 プロジェクトの目的は再生可能エネルギーからCO2(二酸化炭素)フリーの水素を製造して、工場内に貯蔵したうえで、燃料電池フォークリフトや定置型燃料電池で利用できるモデルを構築することだ。

 さらに天候によって変動する太陽光発電の出力に応じて、余剰電力を工場内で消費するほか、電力会社から送られてくる系統電力を併用して、電力と水素の需給バランスを調整するエネルギー管理にも取り組む(図2)。

図2 太陽光発電による水素製造・利用実証事業の全体像。FC:燃料電池、EMS:エネルギー管理システム。出典:豊田通商

 実証に使う太陽光発電システム、水素製造・供給システム、燃料電池フォークリフトを2017年3月までに宮田工場に導入する。太陽光発電で作った水素を工場の燃料電池フォークリフトで利用する試みは国内で初めてである。2017年度には定置用の燃料電池も導入して、水素の需給状況に合わせて工場内に電力と熱を供給できるようにする。

 宮田工場では構内の輸送機器として電動フォークリフトを使っている。電力会社が供給する系統電力は火力発電が中心になるためにCO2の排出を伴う。太陽光発電で作ったCO2フリーの水素を利用できる燃料電池フォークリフトを導入すると、現在と比べてCO2の排出量を約5割も削減できる見込みだ。

 このプロジェクトは経済産業省が推進する「地産地消型再生可能エネルギー面的利用等促進事業費補助金」を受けて実施する。宮田工場を運営するトヨタ自動車九州のほか、地元の福岡県、九州電力グループの九電テクノシステムズ、同じトヨタグループの豊田通商の4者で取り組んでいく(図3)。補助金は年度ごとに最高4億円を交付する予定で、最長で3年間の継続が認められる。

図3 水素製造・利用実証事業の役割分担。出典:豊田通商
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