震災から5年間の電力需要、全国で10%縮小するも地域で開きエネルギー管理(1/3 ページ)

2011年3月に東日本大震災が発生して以降、電力の需要は縮小を続けている。国の広域機関がまとめた2015年度までの実績値によると、震災後の5年間で全国の需要は10%も減少した。特に電気料金を値上げした地域で減少率が大きく、最大は関西の13%減だった。沖縄だけは5年間で需要が増えた。

» 2016年08月08日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 全国レベルの電力の需給調整を担う電力広域的運営推進機関(広域機関)が、震災前の2010年度から震災後の2015年度までの需要の状況を報告書にまとめた。年間の需要電力量は2010年度の1兆66億kWh(キロワット時)から減り続けて、2015年度には10.2%少ない9041億kWhまで縮小した(図1)。

図1 全国の需要電力量の推移。出典:電力広域的運営推進機関

 震災直後の2011年度に大幅に減少した後、2012年度と2013年度は1%前後の微減にとどまったが、2014年度と2015年度には2%前後の減少率になっている。LED照明をはじめ電気製品の消費電力が着実に小さくなることを想定すると、今後も全国の需要電力量は年2%程度のペースで縮小していく可能性が大きい。

 地域別に見ると、沖縄を除く9つの地域で震災前よりも需要が減少している(図2)。震災からの5年間で需要が最も減少した地域は関西で、減少率は13.1%に達した。次いで東京と四国が12.2%減、北海道が10.2%減だった。2ケタの減少率になったのは以上の4地域だが、いずれも震災後に電気料金を値上げしている。中でも関西と北海道は2回の値上げを実施したことが需要の低下を加速させた。

図2 地域別の需要電力量の推移。出典:電力広域的運営推進機関

 一方で減少率が最も小さかったのは中部の5.8%である。中部も2014年に電気料金を値上げしたが、他の地域と比べて値上げ幅が小さかったために需要の減少を抑えられたようだ。震災後に電気料金を値上げしていない3つの地域を見ると、北陸が7.4%減、中国が8.8%減、沖縄が1.1%増で、相対的に需要は堅調と言える。

 広域機関は地域別の負荷率も公表した(図3)。1年間のうちに最大の需要が発生した日の電力量を100%として、年間の平均需要の割合を算出したものだ。負荷率が高いほど、年間の需要が安定して推移したと考えることができる。電力会社にとっては発電設備の利用率にも影響を与える指標である。

図3 地域別の年負荷率の推移。出典:電力広域的運営推進機関

 全国平均の負荷率は2015年度に62.6%まで下がり、震災前の2010年度よりも低くなった。最大需要に比べて年間の電力量が少なくなった結果だ。見方を変えると、最近は利用者が最大需要をさほど意識しなくなったとも考えられる。

 震災直後は夏と冬に発生する需要のピークを抑えて、電力が不足する事態を回避しなくてはならなかった。最近では電力が不足する心配はなくなり、ピークの抑制よりもトータルの電力量を削減する方向に利用者の関心は移っている。今後も負荷率が下がっていく可能性は大いにある。

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