震災直後には夏の日中と冬の夕方に発生するピークを抑えることが節電対策の基本になっていた。実際に夏は14時台に、冬は17時台に最大需要が発生するケースが多かった。ところが2015年度の各地域の状況を見ると、最大需要が発生する時間帯は変わってきている。
夏の最大需要は地域によって12時台、15時台、17時台に発生している。北海道・北陸・沖縄が12時台、四国と九州が17時台で、残る5地域が15時台だ(図8)。地域ごとに気温が上昇する時間帯の違いもあるが、全体的に冷房需要が遅い時間帯に移ってきた。
これも節電対策の変化が影響していると考えられる。というのも震災前には各地域で15時台にピークを迎えていたからだ。節電を意識しないで冷房を使っていると15時台がピークになる。無理のない節電対策が家庭と企業に浸透してきたことがうかがえる。2015年度と2014年度に最大需要が発生した日の状況を震災前の2010年度と比べても、時間帯による需要のカーブに違いは見られない(図9)。
冬の最大需要も地域でばらつきがある。午前の10時台にピークになったのが中部・関西・中国の3地域で、午後の18時台は北海道・東北・北陸の3地域だ(図10)。東京は珍しく12時台に最大需要が発生した。当日(1月18日)は午前中に雪が降って暖房需要が急に増えたためで、例外的な状況である。
震災前は各地域ともに冬は18時〜19時台にピークを迎えることが多かった。2010年度に最大需要が発生した日も18時台がピークで、需要のカーブは直近の2015年度とほとんど同じ形だ(図11)。ただし2014年度は17時台にピークが来ている。節電対策の違いが需要のカーブにも表れている可能性がある。
こうして見てくると、震災後の電力の需要は単純に減少しているわけではないことがわかる。節電対策の変化や電気料金の増減が影響を及ぼしながら、地域や時間帯によって差が出る。発電・送配電・小売の各事業者は需要の推移をきめ細かく把握しながら、短期と中長期の計画を立案することが重要だ。
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