送配電ネットワークの利用料、発電事業者も2020年度から負担へ動き出す電力システム改革(68)(1/2 ページ)

電力市場の構造改革に伴って送配電ネットワークの費用負担を見直す。現在は小売電気事業者が電力会社の送配電ネットワークを利用するために託送料金を支払う仕組みになっている。2020年度に実施する発送電分離に合わせて、発電事業者も送配電ネットワークの費用を負担する制度に変わる。

» 2016年09月06日 11時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

第67回:「電力会社が小売全面自由化で攻勢かける、新電力より単価を安く」

 自由化で電気料金が安くなったが、小売電気事業者にとっては電力会社に支払う送配電ネットワークの利用料(託送料金)の負担が大きい(図1)。地域によってばらつきはあるものの、小売価格の4割強を託送料金が占めている。一方で電力を供給する発電事業者には託送料金は発生しない。

図1 現在の電気料金の仕組み。出典:資源エネルギー庁

 電力市場の健全な競争を促進する電力・ガス取引監視等委員会が、こうした送配電ネットワークの費用負担の仕組みを変更する検討に入った。送配電ネットワークの費用には発電所から変電所、さらに住宅・商店やビル・工場まで電力を送る配電のコストが含まれている(図2)。

図2 送配電ネットワークの費用の対象(原価・単価は東京電力の例、画像をクリックすると拡大)。出典:電力・ガス取引監視等委員会

 このうち発電所の費用は電力会社の火力発電所と水力発電所が対象になる。送配電ネットワークを流れる電力の周波数を調整する「アンシラリー」と呼ぶサービスのコストだ。電力は需要と供給力の変動によって周波数が不安定になるため、火力発電所や水力発電所の出力を上げ下げして調整する必要がある。需要家に供給する電力の品質を維持するコストであることから、小売電気事業者が負担する託送料金の原価に入っている(図3)。

図3 託送料金原価の算定方法。NW:ネットワーク。出典:電力・ガス取引監視等委員会

 ところが電力市場の構造変化によって新たな課題が出てきた(図4)。再生可能エネルギーの電源を含めて発電設備が拡大すると、それに合わせて送配電ネットワークの容量を増強しなくてはならない場合がある。増強にかかる工事費は原則として電力会社が負担することになっているため、託送料金の原価が増える。発電設備に関連したコストであるにもかかわらず、小売電気事業者が託送料金として負担する。

図4 送配電ネットワークの費用負担の課題。VPP:仮想発電所。出典:電力・ガス取引監視等委員会
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