水素で走る船が東京湾に、燃料電池船の2020年実用化を目指す蓄電・発電機器(1/2 ページ)

水素で動く燃料電池船の実運用を目指す動きが進んでいる。東京海洋大学とNREG東芝は、2016年10月上旬から水素で動く燃料電池船の実証試験を開始した。実証の成果は国土交通省が2020年をめどに策定を進めている燃料電池船のガイドラインにも活用される予定だ。

» 2016年10月18日 07時00分 公開
[陰山遼将スマートジャパン]

 政府が掲げる水素社会の実現に向け、燃料電池車(FCV)の普及拡大や水素ステーションの整備が進んできた。さらにこうした水素を燃料とする移動体を、海上でも実現しようという動きが広がっている。

 国土交通省の海事局では「2020年の東京オリンピック・パラリンピック」開催時期をめどに、水素で動く燃料電池船の実現に向けたガイドラインの策定を進めているところだ。このガイドライン策定に向け、2016年10月上旬から東京都で実際の燃料電池船を使った実証試験が始まった(図1)。

図1 実証で使用される燃料電池船「らいちょうN」 出典:国土交通省

 実証の実施主体は東京海洋大学と野村不動産グループのNREG東芝不動産。東京海洋大学は2010年から急速充電に対応する電池推進船「らいちょう」シリーズの開発に取り組んでおり、これまでに3隻を建造してきた実績がある。NREG東芝不動産は水素技術の情報発信および舟運の活性化などを目的に、東京都港区芝浦一丁目地区において国家戦略特区を活用した大規模再開発を目指し行政協議を行っているところだ。両社は2020年に水素燃料電池船の実運用を目指し、2015年から共同研究を行っている。

 今回、新たに始まった実証試験で使用しているのは、らいちょうシリーズ3船目となる「らいちょうN」に改造を加え、東芝製の水素燃料電池を追加搭載した実証船だ。長さ12.6メートル、重量9トンの船で、リチウムイオン電池と燃料電池を搭載している(図2)。

図2 船の後方部分に燃料電池と水素ボンベを搭載している 出典:国土交通省
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