東日本にCO2フリーの水素が広がる、3地域で技術開発を加速自然エネルギー(1/2 ページ)

太陽光や風力など再生可能エネルギーの電力を使ってCO2フリーの水素を製造する取り組みが活発になってきた。山梨県ではメガソーラーの電力から水素を製造・輸送するシステムを開発して2018年度から実証に入る予定だ。北海道や福島県でもCO2フリー水素の技術開発プロジェクトが始まる。

» 2016年11月08日 11時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 再生可能エネルギーの導入を積極的に推進する山梨県が、CO2(二酸化炭素)フリーの水素エネルギーの社会実証に東京電力ホールディングスなどと取り組む(図1)。山梨県と東京電力が共同で運営する「米倉山(こめくらやま)太陽光発電所」の電力を使って、年間に45万立方メートルにのぼる水素を製造する計画だ。燃料電池車に利用すると400台分の水素を1年間にわたって供給できる。

図1 山梨県で実施するCO2フリー水素の技術開発プロジェクト(画像をクリックすると拡大)。出典:山梨県、東京電力ホールディングスほか

 米倉山太陽光発電所は2012年に運転を開始した山梨県で最大のメガソーラーである。新たに開始するプロジェクトでは天候によって変動する発電量を安定させるために、発電した電力の一部を使って水素を製造する。水を電気分解して水素を製造したうえで、水素吸蔵合金や水素ガス圧縮機などに貯蔵して輸送できるようにする試みだ。

 実証プロジェクトには東レと東光高岳も参画して、2017年度から主要な機器の開発に着手する。2018年度には水素の製造・貯蔵・輸送を開始して、段階的に水素の量を増やしていく。さらに2020年度には山梨県内を中心に純水素型の燃料電池を利用する社会実証も予定している。

 同様に北海道の最北端に位置する稚内市でもCO2フリー水素の技術開発プロジェクトが動き出す。市内には大規模な風力発電所やメガソーラーが運転中で、地域の需要を上回る規模の電力を作り出すことができる(図2)。この余剰電力で水素を製造して、電力の安定供給と水素エネルギーの利用促進を図る狙いだ。

図2 稚内市内の再生可能エネルギーによる主な発電施設。出典:経済産業省

 日立製作所と北海道電力がエネルギー総合工学研究所と共同で水素エネルギーの供給システムを開発する。太陽光や風力で発電した電力を蓄電池と水電気分解装置を使って制御する仕組みだ(図3)。水を電気分解して作ったCO2フリーの水素を燃料に混焼発電にも取り組む。発電時に生じる熱は周辺の需要家に供給して空調などに利用する。

図3 稚内市で実施するCO2フリー水素の技術開発プロジェクト。出典:日立製作所、北海道電力ほか

 北海道では稚内市のほかにも、再生可能エネルギーから水素を製造する取り組みが各地域に広がってきた。特に電力の需要が少ない東部ではバイオマスや小水力発電の電力からCO2フリーの水素を製造する実証プロジェクトが始まっている(図4)。いずれの地域でも自治体と民間企業が連携して水素エネルギーを拡大中だ。

図4 北海道で再生可能エネルギーによる水素製造が有望な地域。出典:北海道環境生活部
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