自由化に反する東京電力の相場操縦、市場価格を5カ月間つり上げ電力供給サービス(1/3 ページ)

東京電力グループで小売事業を担う東京電力エナジーパートナーが、市場取引で相場操縦に該当する行為を5カ月間も繰り返していた。市場で売買する電力の売り入札価格を自社の小売原価と一致させる方法によって、価格を不当につり上げていたことが国の監視委員会の調査で明らかになった。

» 2016年11月21日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 電力・ガス取引監視等委員会が東京電力エナジーパートナー(東京電力EP)に対して小売電気事業者では初めての業務改善勧告を11月17日に発令した。6月にも送配電事業会社の東京電力パワーグリッドが電力使用量の通知遅延を理由に同委員会から業務改善勧告を受けているが、それと比べて東京電力EPの今回の該当行為は悪質だ。

 委員会が明らかにした内容によると、東京電力EPは日本卸電力取引所が運営する「1日前市場」において、売り入札価格を不当に高く設定して取引行為を実施していた。1日前市場は電力を供給する1日前の時点で取引を確定させる市場で、国内の電力取引の中心に位置づけられている(図1)。

図1 日本卸電力取引所が運営する4種類の市場。出典:日本卸電力取引所

 この重要な市場で東京電力EPは2016年4月1日から8月31日まで5カ月間にわたって、「相場操縦」に該当する行為を繰り返していた。1日前市場では24時間の電力を30分単位の48コマの商品に分けて売買する(図2)。東京電力EPは取引量が多くなる平日の昼間の時間帯のコマを対象に、「閾値(しきいち)」と名づけた価格を売り入札の下限に設定していた。閾値よりも低い価格では入札を実行しないようにしていたわけだ。

図2 「1日前市場」の取引単位。出典:日本卸電力取引所

 1日前市場では売り手と買い手が入札価格と入札量をコマごとに出し合って取り引きする。1日分の入札が終了すると、価格と量が一致するところで約定価格と量を確定させる方式だ(図3)。入札価格ではなく一律の約定価格で売買する「シングルプライスオークション方式」を採用している。東京電力EPは自社の小売原価を閾値に設定して、それより安い価格で電力を調達できる場合でも、閾値まで引き上げて売り入札を実施した。

図3 「1日前市場」の取引イメージ。出典:日本卸電力取引所

 もし東京電力EPが閾値よりも安い実勢価格で売り入札を実施していれば、約定価格は下落していた。委員会の分析では、該当する5カ月間の平日昼間のコマのうち約6割で約定価格が下がっていたと推定している。その中には約定価格が約3割も低い水準になるコマもあった。相場操縦とみなされて当然の行為である。

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