「発電する窓」、透明な有機薄膜太陽電池で実現太陽光

伊藤電子工業は「第1回 高性能住宅設備EXPO」に出展し、開発中の有機薄膜太陽電池を利用した「スマート発電ウィンドウ」を展示した。陽極に特殊な材料を活用した透明な有機薄膜太陽電池を活用しており、外の景色を見ることも可能だ。

» 2016年12月15日 09時00分 公開
[陰山遼将スマートジャパン]

 伊藤電子工業は「第1回 高性能住宅設備EXPO」(2016年12月14〜16日、東京ビッグサイト)に出展し、開発中の有機薄膜太陽電池を利用した「スマート発電ウィンドウ」を展示した(図1)。

≪図1 展示した「スマート発電ウィンドウ」(クリックで拡大)」

 同社では山形大学などと共同で有機薄膜太陽電池の研究開発を進めている。その特徴の1つが、陽極に特殊な透明材料を採用することで、ほぼ透明な有機薄膜太陽電池を実現している点だ。スマート発電ウィンドウはこの機能を活用し、外の景色も見ることができる「発電する窓」を目指したものである。

 スマート発電ウィンドウには50mm(ミリメートル)四方の有機薄膜太陽電池を96枚利用している。有機薄膜太陽電池を透明なアクリル板で挟み込みこんでおり、この板を建物の内側に取り付ける仕組みとなっている。紫外線や赤外線をカットするため、日光による室内の家具などの色あせを防ぐ効果もあるという。

 現在、このスマート発電ウィンドウは山形大学が山形県米沢市内に開館した有機エレクトロニクスの実証施設「スマート未来ハウス」の窓として実証導入されており、発電量などの検証を続けているところだ。今のところ1日平均で約3Wh(ワットアワー)の程度の電力を発電しているという。

 現時点で開発した有機薄膜太陽電池の発電効率は最大で3.5%程度、透明なタイプでは2%程度。発電量は多くないが、今後さらに改良を続けていく方針だという。現時点で有機薄膜太陽電池の製品化時期などは決まっていないが、薄型かつ低コスト、透明といったメリットを生かし、将来は建材メーカーなどと協業による製品化も視野に入れる。また、同社では柔軟性のある曲面への適用も可能な有機薄膜太陽電池の開発を進めており、同太陽電池の用途拡大を目指す方針だ。

図2 材料を変えることで色を変化させることもできる(クリックで拡大)

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