太陽光発電でイチゴを栽培、世界初の竹バイオマス発電にも挑むエネルギー列島2016年版(35)山口(3/3 ページ)

» 2016年12月20日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]
前のページへ 1|2|3       

森林を侵食する竹でバイオマス発電

 山口県の再生可能エネルギーは太陽光発電を中心に、中小水力発電とバイオマス発電が拡大中だ。小水力発電の導入量は全国で13位に入る規模になった(図10)。バイオマス発電では世界で初めて竹を主燃料に利用する発電所の建設プロジェクトが進んでいる。

図10 固定価格買取制度の認定設備(2015年11月末時点)

 南西部の山陽小野田市にある工業団地の中に、発電能力が2MW(メガワット)ある「山陽小野田バンブーバイオマス発電所」を建設中だ。2017年1月に運転を開始する予定で、年間の発電量は1580万kWhを見込んでいる(図11)。一般家庭の4400世帯分に相当する電力を供給できる。徳島県に本社がある藤崎電機がグループ会社のガイアパワーを通じて発電所を建設・運営する。

図11 「山陽小野田バンブーバイオマス発電所」の事業スキーム。EPC:設計・調達・建設、O&M:運用・保守、SPC:特別目的会社。出典:藤崎電機

 竹には一般の木と違ってミネラル分が多く含まれているために、バイオマス発電設備に悪影響を与えるおそれがある。そこで藤崎電機はドイツのプラントメーカーと共同で竹専用のバイオマス発電設備を開発した。合わせて燃料の竹チップを供給する事業にも取り組んでいく。

 山口県内には1万2000平方メートルに及ぶ竹林が広がり、県全体では150万トンにのぼる竹の資源量が存在する。ところが広範囲に及ぶ竹林が森林を侵食してしまう問題が発生して対策を迫られている。山口県では竹林の伐採を推進するために、竹を燃料に転換する実証試験を2014〜2015年度に実施した。

 伐採後の竹を収集・運搬・燃料化するまでの一連の流れをシステム化する実証プロジェクトだ(図12)。加工した竹チップを県内の木質バイオマス発電所に供給して、木材と混焼発電による効果や影響を調査した。通常の木材に対して5〜8%程度の竹チップを混焼しても発電設備に問題は発生しなかった。今後は竹チップを専焼できる発電設備が完成すると、大量の竹を伐採して発電に利用できる

図12 竹資源の収集・運搬・燃料化の実証試験システム(画像をクリックすると拡大)。出典:山口県農林水産部

 その一方で九州につながる下関市の沖合では、国内で最大級の洋上風力発電所の開発プロジェクトが進行中だ。陸地から1.5キロメートルほどの洋上に、合計で15基の大型風車の建設を計画している(図13)。1基あたり4MWの発電能力を見込み、全体では60MWの規模になる。前田建設工業が400億円の事業費を投じる一大プロジェクトである。

図13 下関市の沖合に建設する洋上風力発電所の景観イメージ(上)、風車配置計画(下)。出典:前田建設工業

 対象の海域では水深が10〜20メートル程度と浅く、発電設備を海底に固定する着床式で建設できる。風車の回転直径は130メートルで、最高到達点は海面から150メートルを超える(図14)。年間の発電量は1億5000万kWhに達して、一般家庭の4万2000世帯分に相当する電力を供給できる。開発が順調に進めば2020年に運転を開始する見通しだ。

図14 風車の設置イメージと大きさ。出典:前田建設工業

 現在のところ地元住民の反対が強く、計画どおりに発電を開始できるか流動的な状況にある。陸地からさほど遠くない沖合に建設・運転するために、騒音や振動を懸念する声があるほか、下関市の審議会は景観の問題も指摘している。再生可能エネルギーの導入にあたって生活環境や自然環境を保護する重要度は高い。地元の賛同を得たうえで建設に着手することが望まれる。

*この記事の電子ブックレットをダウンロードへ

2015年版(35)山口:「CO2フリーの水素を動物園や市場へ、農山村に小水力発電と竹バイオマス」

2014年版(35)山口:「小水力発電をダムに展開、サイフォン式やバルブ式で水流を生かす」

2013年版(35)山口:「本州と九州のあいだで洋上風力、20基の大型風車が未来をひらく」

前のページへ 1|2|3       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.