リチウムを超える「アルミニウム」、トヨタの工夫とは蓄電・発電機器(4/4 ページ)

» 2016年12月21日 09時00分 公開
[畑陽一郎スマートジャパン]
前のページへ 1|2|3|4       

添加剤の効果あり

 アルミニウムとは結合せず、鉄と特異的に結合する物質として硫黄化合物が考えられる。「立体障害が起きると困るため、硫黄を含む低分子化合物を選んだ。さらに実験中に他のグループからひどい臭気の問題があると指摘されたため、NaSCN(チオシアン酸ナトリウム)を選択した」(陶山氏)。チオシアン酸ナトリウムは、試薬や染色、除草剤に用いられる化合物だ。

 チオシアン酸ナトリウムを添加したところ、顕著な効果を示した。自己放電時に発生する水素の発生速度を測定した結果だ。添加剤を導入することで自己放電速度を3分の2に抑えることができたという。

 放電残渣については効果があったのだろうか。「添加剤を加えた電解液にアルミニウム板を浸漬すると、残渣が細かい散らばった状態となった。放電残渣を微細化できたということだ」(陶山氏)。電池の放電が抑制されにくくなる。

 この結果、アルミニム負極だけを観察する半電池(ハーフセル)において、容量が30%増えたという。さらに電池の内部抵抗に由来する過電圧も下がった。

 トヨタ自動車の研究は、さまざまな品質のアルミニウムのうち、安価な材料を用いながら、電池の性能を落とさないように工夫するというもの。電気自動車に向けた実用性を優先した研究内容といえるだろう。

【更新履歴】 本文公開後、注1と注2の順番を入れ替えました(2016/12/26)。



前のページへ 1|2|3|4       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.