開発中の全固体リチウムイオン蓄電池セルを日立造船が公開した。第7回 国際二次電池展(バッテリージャパン 2016、東京ビッグサイト)では4種類の電池セルを見せた。製造時に液系プロセスを用いず、プレス加工によって電池セルを作り上げたことが特徴。使用時の加圧が不要で、エネルギー密度も確保した。
2016年3月2〜4日に開催された第7回 国際二次電池展(バッテリージャパン 2016、東京ビッグサイト)では、全固体リチウムイオン蓄電池セルの試作品を日立造船が展示した(図1)。
「約10年間の基礎研究の成果を今回試作品として初めて見せた。当社の電池セルの特徴は製造時に液系プロセスを一切使っていないことだ」(日立造船機械事業本部開発センター電池プロジェクトグループに所属する奥村拓郎氏)。これが電池性能改善に役立つのだという。
全固体リチウムイオン蓄電池は、スマートフォン用の蓄電池などとは異なり、電解質に有機溶媒(液体)を用いていない*1)。電解質の漏れや高温下のガス化が起こらず、動作温度範囲が広くなる。動作時に高温になるような用途に強みがある。
「2016年から他社に向けて評価用などに使う電池セルのサンプル提供を始めており、2020年の量産を目指している。大きな用途目標は自動車。電気自動車用の蓄電池を狙っている」(奥村氏)。冷却機構を簡素にでき、電池システムの小型化やコスト低減に役立つ他、異常発生時にも電池の破損が起こりにくいからだ。
液体の電解質を使うリチウムイオン蓄電池は60度程度まで動作する。今回の蓄電池では100度でも充放電できる(図2、図3)。低温下の性能も高い。−40度まで充放電が可能だ。
*1) 全固体電池は、液体電解質を使っていないものの、製造時に液体の材料を用いる。日立造船は製造時に液体の材料を利用しない。
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