得られた光触媒シートは、光触媒であるバナジン酸ビスマスとスズとニッケルの導電層が強固に接合されている。さらに、本光触媒シートを水中に入れた場合(図3-a)、導電層からNi2+イオンが微量に水中に溶出し(図3-b)、水中に微量溶解している鉄イオン(Fe2+)とともに混合酸化物として光触媒表面に固定化されること(図3-C)、このニッケル鉄混合酸化物(NiFeOx)が光触媒の助触媒として機能することを発見した。
従来法で作製したバナジン酸ビスマス光触媒シートと、同手法で作製した光触媒シートを水中(ホウ酸緩衝液中)に浸漬し、光照射を行った場合の酸素発生に基づく光電流を測定したところ(図4)、従来法で作製した光触媒シートでは、酸素発生機能を最大とさせる動作条件の場合、光照射開始から20時間後程度から助触媒の脱落、溶解に起因する活性低下が始まる。
これに対して、同手法によって作成した光触媒シートでは、1100時間経過しても全く活性低下が認められなかった。同手法によって作製された光触媒電極表面では、助触媒であるニッケル鉄混合酸化物(NiFeOx)が光触媒表面から脱落、溶解しても導電層からNi2+イオンが微量に水中に溶出すことで助触媒が自己再生される。これにより、1100時間という長寿命を達成することができた。このような助触媒の自己再生機能を有する光触媒は、これまで全く知られていなかったという。
なお、今回の研究成果は2016年12月19日16時(英国時間)に英国科学誌「Nature Energy」のオンライン速報版で公開された。
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