太陽電池が反応する波長の光に変換、1000℃の熱で発電効率40%以上に蓄電・発電機器

京都大学と大阪ガスの共同研究チームが太陽電池の発電効率を40%以上に高める新技術を開発した。太陽電池の素材にもなるシリコンを微細な3次元構造で形成して光源を作る。この光源に1000℃の熱を加えると、太陽光のうち発電に利用できる波長の光だけを放出する特性が生まれる。

» 2017年01月05日 13時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 京都大学と大阪ガスが共同で開発した技術は「熱輻射(ふくしゃ)光源」と呼ぶ。この光源に1000℃程度の熱を加えると、太陽光のうち波長の短い可視光〜近赤外線だけを放出する。太陽光のスペクトル(分光分布)の中で、太陽電池で発電できるのは可視光〜近赤外線の狭い範囲にある波長の光だけだ。熱輻射光源から放出する可視光〜近赤外線を太陽電池に当てることで、通常と比べて2倍以上の効率で発電できる(図1)。

図1 「熱輻射光源」に熱を加えると太陽電池が発電できる光だけを放出。出典:京都大学、大阪ガス

 熱輻射光源は太陽電池の素材にも使われているシリコン(Si)を微細な3次元構造で形成して作る。二酸化ケイ素(SiO2)の上に棒状のシリコンを規則的に積み上げた「3次元フォトニックナノ構造」である(図2)。棒状のシリコンの直径は200ナノメートル(=0.2ミクロン)程度だ。

図2 熱輻射光源のフォトニックナノ構造。Si-Rod:ケイ素棒、SiO2:二酸化ケイ素、nm:ナノメートル(=10億分の1メートル)。出典:京都大学、大阪ガス

 3次元フォトニックナノ構造で作った熱輻射光源に太陽光を集めて1000℃に加熱すると、光源から放出する光の波長は1ミクロン以下の可視光〜近赤外線の領域に集中する(図3)。この状態で太陽電池が光源から光を受けることによって、ほぼすべての光を発電に利用して電力に変換できる。

図3 フォトニックナノ構造を利用して可視光〜近赤外線の光を強く放出。μm:ミクロン(=100万分の1メートル)。出典:京都大学

 通常の太陽光には発電に利用できない広い範囲の波長の光が含まれている(図4)。このため太陽光のエネルギーを太陽電池で電気エネルギーに変換できる割合は20%程度にとどまってしまう。熱輻射光源を使って太陽光のスペクトルを特定の波長の光に集約することで、太陽光から電気エネルギーに変換できる割合は40%以上に向上する。この技術を実用化できれば、太陽光発電の課題である発電コストの大幅な低減につながる。

図4 太陽光スペクトルを狭い帯域の波長に集約する効果(画像をクリックすると拡大)。μm:ミクロン、a.u.:任意単位。出典:京都大学

 熱源には太陽光の熱エネルギーのほかに、化石燃料の燃焼熱を利用することもできる。再生可能エネルギーと化石燃料のハイブリッドによる高効率の発電技術も考えられる。京都大学と大阪ガスは引き続き熱輻射光源を使った太陽光発電技術の改良に取り組み、早期に技術を確立させる方針だ。

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