AIでベテラン技師の精度を実現、ボイラー燃料調整を自動化IT活用(1/2 ページ)

三菱日立パワーシステムズ人工知能を活用したボイラー燃焼調整の自動化システムを開発した。台湾の火力発電所に実証導入したところ、ベテラン技師と同等精度の性能を確認できたという。効率を改善できればメリットが大きい火力発電所向けのITサービスの開発が加速している。

» 2017年01月12日 07時00分 公開
[陰山遼将スマートジャパン]

 三菱日立パワーシステムズ(MHPS)は2017年1月10日、人工知能(AI)を活用したボイラー燃焼調整の自動化システムを開発したと発表した。台湾公営の台湾電力が運営する「林口(リンコウ)火力発電所」で実機への導入試験を行ったところ、良好な成果を得られたとしている。

 開発した自動化システムは、同社が開発中の「ボイラーAIシステム」と呼ぶ火力発電向けシステムの中核技術の1つになる。ボイラーAIシステムは、ボイラーの運転から得られるさまざまなデジタルデータを解析し、運転および保守管理コストなど発電コストの最適化、不具合などの早期検知を目的としたもので、MHPSは国内外の電力会社へ提供することを目指し開発を進めている。

 今回の試験実施先である台湾電力の林口発電所は、MHPSが出力80万kW(キロワット)の石炭焚き超臨界圧火力発電設備のボイラーと、蒸気タービンをそれぞれ3基ずつの納入している。1号機は既にに商業運転を開始し、2号機は2017年春の運転開始を予定している(図1)。

「林口発電所」出典:MHPS

 実証試験では、この林口火力発電所における燃料調整試験にAIを活用した自動化システムを導入した。一般に燃焼調整試験は、ベテラン技師がプログラム実行時に設定する複数のパラメーターを調整し、排ガス特性、燃焼バランス、蒸気温度特性、ボイラー効率などのプロセス最適化を行っている。

 今回の試験では、プロセス値の変化を学習させたAIシステムに、調整試験での最適なパラメーターを提案させた。その結果、AIが提案するパラメーターがベテラン技師の設定とほぼ同じになることを確認でき、バランスのとれたプロセス値を得ることができたという。同社では今後も精度の向上や適用機能の拡大などの高度化に取り組む方針だ。

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