離島で地熱発電を増強、八丈島自然エネルギー(1/2 ページ)

八丈島では東京電力が運営する地熱発電所が活躍している。2022年度をめどに、より出力を高めた地熱発電所をオリックスが建設・運営する計画だ。

» 2017年01月18日 13時00分 公開
[畑陽一郎スマートジャパン]

 東京都八丈町は2017年1月13日、八丈島地熱発電利用事業の事業者公募について、二次審査の結果、オリックスを選定事業者とすると発表した。

 八丈島は東京から南に約290キロメートル(km)離れた太平洋上の火山島だ。北西の西山(八丈富士)と南東の東山(三原山)が合わさったひょうたんのような形の島である(図1)。東山の方が10万年ほど古い火山だが、地熱発電所に適している。地下に地下水を通さない「キャップロック」と呼ばれる構造があり、地熱発電に利用できる熱水を地下に保っているからだ。

 八丈島には離島唯一の地熱発電所があり、人口8000人弱の島の生活を支えている。東京電力が1999年に運転を開始した「八丈島地熱発電所」(八丈町中之郷2872)だ*1)。出力は3300キロワット(kW)。春季の夜間はほぼ地熱発電所の出力だけで需要をまかなっている。夏季の日中などは同社のディーゼル火力発電所(出力1万1000kW)が需要を補う。

*1) 同発電所の構内には出力500kWの風力発電所が併設されていたものの、現在は撤去されている。

図1 八丈島の標高情報と発電所の位置 右側の大きな島が八丈島。北西端から南東端までの距離は約15km。発電所の建設予定地を赤丸で示した 出典:Wikipedia日本語版のパブリックドメイン画像を加工

規模拡大から事業者主体へ

 「2013年に東京都と共同で『八丈島再生可能エネルギー利用拡大検討委員会』を立ち上げ、地熱発電の規模を拡大できないかどうか、より再生可能エネルギーを導入できないかどうか検討を始めた。技術的に可能だという結果になったものの、送電線の容量(最大3800kW)が足りない。委員会に参加していた東京電力は、現有施設の維持は難しいものの、新事業を立ち上げるのであればバトンタッチに協力すると発言してくれた。そこで2016年6月に事業者の公募を開始した」(東京都八丈町企画財政課)*2)

 八丈島の地熱発電所には有利な点が1つある。既存の温泉との調整だ。八丈島にも温泉はあるものの、町営だ。民間との交渉に手間取ることがないだろう。

 オリックスの提案内容によれば、出力4444kW(発電端)*3)の地熱発電所の運転を2022年度に開始する計画である。「東京電力との交渉が必要になるものの、既設の地熱発電所と同じ場所で各種調査を速やかに実行できれば、建設に至る時間を短縮できる可能性がある」(同課)。「町と協定書を取り交わした後、調査が必要であると考えており、すぐに建設に取りかかるのではない」(オリックス)。

 オリックスは地熱発電の開発に積極的だ*4)。現在、石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の助成金を受けて、全国で5カ所の地熱調査を進めている。中でも北海道東部に位置する羅臼町では計画が進んでおり、調査井の建設に至っている。八丈町は6件目に相当する形だ。

*2) 地熱発電所は熱水と蒸気の混合物を生産井経由で取り出す。ところが、熱水の地下での移動・枯渇や、ケイ酸塩の付着などによってほぼ全ての生産井の能力(発電所の出力)が次第に低下する性質がある。
*3) 発電所の出力を示す数字は2つある。第一が発電機の出力(発電端)だ。発電所内で利用する電力を発電端出力から差し引いた送電出力を送電端出力と呼ぶ。4444kWは送電線の容量よりも大きいものの、発電所を稼働するために必要な電力があり、オリックスによれば送電線の容量とのミスマッチは起こらないという。
*4) オリックスグループは既に杉乃井地熱発電所(出力1900kW)を併設する「杉乃井ホテル」(大分県別府市)を所有、運営している。ただし「再生事業によって入手した事業であり、当社が立ち上げた設備ではない」(オリックス)。

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