内閣府が2016年3月に実施した消費動向調査によると、家庭の電気冷蔵庫の平均使用年数は11.3年と長い(図4)。テレビは8.0年で、エアコンは12.3年だ。消費電力量の大きい冷蔵庫やエアコンのほうがテレビよりも古い製品を使っていることがわかる。
資源エネルギー庁は家庭の省エネを推進するため1998年に「トップランナー制度」を導入した。エネルギーの消費量が大きい製品を対象に、メーカーや販売会社に対して省エネ性能の高い機器を製造・販売するように求めている。
この制度を導入した効果は顕著で、電気冷蔵庫では2007年度から2015年度のあいだに省エネ効果で1台あたりのCO2(二酸化炭素)の排出量が56%も減少した(図5)。冷蔵庫の消費電力量が少なくなって、年間の電気料金は8530円も安くなる。
冷蔵庫のほかにも家庭で使う機器の多くは、トップランナー制度によって省エネ性能が大幅に向上している。最新の機器に切り替えることで消費電力量を減らし、電気代を節約することが可能だ。ただし購入費用の面で二の足を踏む家庭は少なくない。その点で初期投資ゼロの「電気代そのまま払い」による買い替えは有効な手段になる。
JSTは静岡県内の社会実証に先立って、全国の一般家庭を対象に2013年にアンケート調査を実施した。その結果を見ると、「電気代そのまま払い」を適用することで、省エネ効果の高い製品の買い替えが進む。冷蔵庫では52%から77%へ、LED電球は19%から71%へ大幅に増える(図6)。
さらにガスで電力と温水を作る燃料電池の導入意向も37%から69%へ高まる。家庭用の燃料電池「エネファーム」は国の補助金を受けても導入費用が100万円ほどかかる。初期投資ゼロで導入できれば、普及スピードが加速することは間違いない。今後はJSTが金融機関などの協力を得てファンドを設立して、「電気代そのまま払い」の事業スキームを全国に展開する構想もある。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.