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» 2017年02月24日 13時00分 UPDATE

蓄電・発電機器:高性能リチウム電池、産廃シリコンを利用 (1/3)

リチウムイオン蓄電池の性能を高める手法として、実用化が進む「シリコン負極」。容量を従来の3倍程度に高めることが可能だ。しかし、負極の構造が複雑になり、原料コスト、製造コストがかさむ。東北大学と大阪大学の共同研究チームは、半導体産業の産業廃棄物であるシリコン切粉を原料として用い、製造コストを引き下げる技術を開発した。試作した蓄電池の性能は高い。

[畑陽一郎,スマートジャパン]

 リチウムイオン蓄電池の容量を高める要求が強い。特に携帯型機器や電気自動車では重量や体積を変えずに容量を増やしたい。

 このような要求をかなえる研究成果を東北大学と大阪大学の共同研究チームが2017年2月16日に発表した*1)。特徴は2つある。1つはこれまで産業廃棄物として扱われていたケイ素(シリコン)の切粉を原料に用い、原料コストを低減したこと。もう1つは切粉から、有用な構造を採る微細なシリコン結晶を低コストで製造する手法を開発したことだ。

 これまでもシリコン負極を採用した電池が開発・販売されているものの、材料コストや製造コストが高かった。

 産業廃棄物を利用したにもかかわらず、今回のリチウムイオン蓄電池の性能は高い。炭素だけからなるグラファイト負極(黒鉛負極)を用いた一般的な蓄電池と比較して、容量は3.3倍(1グラム当たり1200ミリアンペア時、1200mAh/g)に増加、800回以上の充放電に耐える(図1)*2)

*1) 東北大学多元物質科学研究所の准教授である西原洋知氏、同教授である京谷隆氏、大阪大学産業科学研究所の准教授である松本健俊氏、同教授の小林光氏、他3人からなる研究グループが2017年2月20日公開のScientific Reports誌に論文を発表した。大阪大のグループはこれまでシリコン切粉のリサイクル手法に取り組み、東北大のグループはシリコン負極材料の開発を続けてきた。
*2) シリコンナノフレークに化学気相成長法(CVD法)で13重量%の炭素を被覆したことで、容量を高めたもの。「半電池」と呼ばれる測定用の電池を用いた結果。電流密度は1グラム当たり960ミリアンペア。測定温度は25℃。

図1 試作したリチウムイオン蓄電池の性能 800回の充放電後も容量1200mAh/gを維持(左軸)、充電量に対する放電量の割合(クーロン効率)が98〜99.8%という高い範囲にある(右軸) 出典:東北大学・大阪大学

シリコン負極の課題とは

 多くのリチウムイオン蓄電池では、リチウム金属酸化物で作った正極と、炭素材料で作った負極の間をリチウムイオンが移動することで、充放電を実現している。

 軽く容量の大きな蓄電池を開発するには、重量当たりに大量のリチウムイオンを蓄えることが可能な電極を開発する必要がある。正極、負極とも改善の余地があり、今回は負極に着目した。

 黒鉛負極では、充電時に炭素原子6個当たり、リチウム原子を最大1つ貯蔵できるため、理論容量は372mAh/gとなる。黒鉛負極は安価であり、繰り返し充放電を行っても構造が安定している。つまり寿命が長い。これが黒鉛負極の採用理由だ。

 さらに多くのリチウム原子を貯蔵できる物質を負極に採用すれば、蓄電池の容量が増える。スズ(Sn)やゲルマニウム(Ge)、ケイ素(シリコン、Si)といった物質だ。現在実用化が最も進んでいるのはシリコン負極(図2)。

図2 リチウムイオン蓄電池の負極材料の理論性能 一般には図左下の黒鉛を用いる。図の右側に位置するほど、大量のリチウムを蓄えることができ、容量が増える。シリコン負極の理論容量は3572mAh/g 出典:NEDO(二次電池技術開発ロードマップ2013、BatteryRM2013)

 これらの代替物質には共通した課題がある。充電時にリチウムを貯蔵すると体積が数倍に増え、機械的なゆがみが生じるのだ。シリコンの場合は3倍以上に膨張する。すると、周囲の物質との間で電気的な接触が失われ、容量が急速に劣化する。つまり寿命が極端に短くなる。

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