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» 2017年03月21日 09時00分 UPDATE

エネルギー列島2016年版(47)沖縄:台風に負けない風力発電に挑戦、バイオマスで島のCO2を減らす (1/4)

猛烈な台風が襲う沖縄県では発電設備にも対策が必要だ。強風に耐えられる世界初の風力発電機の実証実験が沖縄本島の南部で始まり、風速30メートル/秒の台風が接近した時でも発電を続けた。島内で生まれる廃食用油や下水汚泥を活用したバイオマス発電によるCO2削減の取り組みも広がる。

[石田雅也,スマートジャパン]

 沖縄本島の最南端に近い南城市(なんじょうし)の丘の上に、高さ3メートルの円筒形の風力発電機が建っている(図1)。ベンチャー企業のチャレナジーが開発した「垂直軸型マグナス風力発電機」である。

図1 南城市の位置(左)、「垂直軸型マグナス風力発電機」の実証実験(右)。出典:南城市役所

 この風力発電機は3本の細長い円柱が風を受けて回転しながら発電する(図2)。強風が吹いても発電できる点が最大の特徴で、2016年8月から「台風発電実証実験」を実施中だ。実験開始からまもない9月には最大瞬間風速30メートル/秒の台風が接近したが、それでも発電を続けて実力を証明した。

図2 垂直軸型マグナス風力発電機の外観。出典:チャレナジー

 通常の風力発電機では風速が20〜25メートル/秒に達すると風車の回転を停止するように設計されている。風車が回転し過ぎて破損事故を起こすのを防ぐためだ。チャレナジーが開発した風力発電機は円柱の自転によって発生する垂直方向の揚力(マグナス力)を利用する点が違う(図3)。3本の円柱の中心にある垂直軸の回転速度を揚力で制御しながら発電機を回す仕組みになっている。

図3 マグナス風力発電機の構造(左)、風の向きとマグナス力(右)。出典:ユーグレナインベストメント

 たとえ強風を受けても回転が速くなりすぎることはなく、破損する事態を防止できる。マグナス力を生かした風力発電機の実証は世界で初めての試みだ。現在のところ発電能力は1kW(キロワット)と小さいが、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の助成を受けて10kW機の開発を進めている。台風にも耐えられる小型の風力発電機として実用化を目指す。

 大小さまざまな島からなる沖縄県では、小規模の石油火力発電所で島ごとに電力を作っているのが現状だ。石油火力は燃料費が高くてCO2(二酸化炭素)の排出量も多く、電気料金と地球温暖化の両面で重要な課題になっている。

 最近では海から吹く風を利用して風力発電の導入が進み始めた。ただし台風に備えて風車を地面に倒せる可倒式の風力発電設備が多い(図4)。可倒式は広い平地を必要とするため、面積の小さい離島では設置できる場所が限られてしまう。

図4 可倒式の風力発電設備(画像をクリックすると運転時の状態も表示)。出典:沖縄電力

 小型で台風にも耐えられるマグナス風力発電機を実用化できれば、離島の空き地に数多く設置することが可能になる。台風の影響を受けずに電力を供給できて、CO2も排出しない。災害対策と温暖化対策の両面から、マグナス風力発電機に対する期待は大きい。

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